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(4)お口の健康と体の健康 旭川荘療育・医療センター歯科医長 村田麻美

治療でどんなことをするのか、目で見て流れを理解するための「絵カード」

旭川荘療育・医療センターの歯科診療室。ゆったりとした空間で移乗用リフトも設置されている

病棟で食事の様子を見せてもらいながらアドバイスを行う摂食嚥下リハビリテーション

村田麻美歯科医長 

 「お口」は、人間の体の中でどのような役割をしているのでしょうか?

 ○呼吸をする=生きるために必要不可欠

 ○ご飯を食べる=栄養確保

 ○言葉を話す、表情をつくる=コミュニケーション

 「お口」は日常生活に直結した、とても大切な役割を担っています。そのため、お口の健康を保つことは体の健康を保つことに直接関係しています。

 旭川荘療育・医療センターの歯科では、小児歯科、口腔(こうくう)外科、摂食嚥下(えんげ)リハビリテーションなど、いろいろな専門を持つ歯科医師が協力し、さまざまな角度からお口の健康を守っています。

 治療に関しては、患者さんやご家族とよく話し合い、患者さんができるだけ安心して、安全に受けられるように工夫しています。

 例えば、「新しい場所が苦手」とか「歯医者が苦手」という患者さんには、むし歯があったとしても、すぐに削るような治療をしない場合もあります。まず、「診療室に入る」→「椅子に寝る」→「診療台に寝て歯磨きをする」→「歯を削る道具を口に入れる」と、段階的にトレーニングを重ね、徐々に治療を進めていきます。

 また、絵カード(視覚ツール)を使い、治療の流れに見通しを立てたり、診療台で体が安定するようにクッションを入れたり、個々の患者さんに合ったサポートをしています。

 どうしても当センターでの治療が困難な場合は、全身麻酔を使った歯科治療ができる岡山大学病院へ紹介することもあり、連携を取って治療しています。

 通常の歯科治療の他に、摂食嚥下リハビリテーションも行っています。これは「食べたり、飲んだりすることが大変な方や困っている方」へのリハビリです。老若男女、いろいろな障がいを持った方が受診されますが、特に小児を対象とした摂食嚥下リハビリテーションは、岡山県内で行っている病院は限られていて、その一つが当センターの歯科です。

 患者さんは、「離乳食が進まない」「食事中にむせる」「かまずに丸のみする」「食事がのどに詰まる」など、多様な食事の悩みを抱えておられます。リハビリでは、実際に食事する様子を見せてもらいながら、より安全に楽しく食事するためのアドバイスを行っています。

 食事には、口の動かし方、飲み込みの状態、姿勢、道具の使い方、全身状態など、多くの要素が関わってきます。そのため、歯科医師1人でリハビリを進めるのではなく、医師、看護師、栄養士、理学・作業療法士、言語聴覚士など、多職種と協力していくことが大切だと思っています。

 他の職種と連携しながらリハビリができるのも、当センターの特徴です。旭川荘内にはたくさんの関連施設がありますので、そちらに訪問してアドバイスを行うこともあります。摂食嚥下リハビリテーションを取り入れてから、施設内での食事に関する事故(誤嚥や窒息)が少なくなり、利用者さんがより楽しく、安全に食事を取れるようになりました。

 「お口の健康」=「体の健康」です。「いつまでもお口から食べて、いつまでも自分の歯でかむ」ことができれば、生きていく上でとても幸せです。障がいがあってもなくても、お口のこと、食事のことは、お気軽に私たちにご相談ください。

     ◇

 旭川荘療育・医療センター(086―275―8555)

 むらた・まみ 昭和大学歯学部卒、口腔衛生学教室で摂食嚥下リハビリテーションを学び、博士号取得。日本障害者歯科学会認定医、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士。支援学校や事業所で講演も行う。趣味は芝居とダンスパフォーマンス。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年05月08日 更新)

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