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倉敷で破傷風ワクチンの処方急増 豪雨以降、片付け中の負傷原因

破傷風の治療や予防接種に使われるワクチン

 西日本豪雨の発生以降、倉敷市内の医療機関で破傷風ワクチンの処方件数が急増している。被災家屋の片付けなどの際に負傷した住民やボランティアらが駆け込むケースが多いという。破傷風菌に対する十分な抗体を持たない世代もあり、専門家は作業前の予防接種を呼び掛けている。

 ワクチン処方件数の増加が顕著だった倉敷中央病院(同市美和)の1カ月間の状況は、豪雨発生前(6月6日~7月5日)が35件だったのに対し、発生後(7月6日~8月5日)は3倍の105件に跳ね上がった。

 泥をかぶった家屋でくぎを踏み抜くなどした人らの来院が相次ぎ、一時はワクチンの在庫が逼迫(ひっぱく)。追加発注などでしのいだという。

 倉敷平成病院(同市老松町)でも普段の処方は月2、3件なのが、発生後の1カ月間は19件に上った。

 破傷風は、土壌中に生息する破傷風菌が傷口から体内に入り感染する。潜伏期間は数日から最長で数カ月ともいわれ、開口障害や呼吸困難などを起こし、重篤化すると死に至る危険がある。

 厚生労働省などによると、予防に有効な混合ワクチンの定期接種が始まったのは1968年。それ以前に生まれた主に50代以上の人と、混合ワクチンの副作用問題で投与が控えられた75~81年の接種対象者は基本的に破傷風の抗体がないとみられる。

 実際に被災後、倉敷中央病院で破傷風ワクチンを処方した被災者やボランティアらには、接種歴のない人が少なくないという。同病院の福岡敏雄・救命救急センター長は「負傷後のワクチン接種も有効だが、未接種の人は予防効果が高い3回接種を前提に、まず1回目を打つだけでも意味がある。医療的な備えをした上で作業に臨み、けがをした場合は早めに医師に相談してほしい」としている。

 破傷風の予防接種 現在は生後3カ月から12歳までにジフテリアなどとの混合ワクチンを定期接種で計5回受ける。制度開始前に生まれるなど、未接種のまま成人した人が十分な予防効果を得るには最低3回、破傷風ワクチンを接種する必要がある。倉敷中央病院など患者への投与を優先し予防接種は受け付けていない病院もあり、医療機関に確認が必要。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年08月08日 更新)

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