岡山大「生体肺区域移植」に成功 国内2例目 父の肺下部分割し女児へ

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)は、重い肺の病気を患う女児(4)の両肺に、父親(35)の肺下部(下葉)を分割して移す「生体肺区域移植手術」に成功した。国内2例目で、いずれも同病院が実施。1例目と比べ、子どもへの適合が難しい大きな肺組織の移植に成功しており、手術機会を広げる成果として注目される。

 肺組織は右肺は上葉、中葉、下葉、左肺は上葉、下葉に分かれており、それぞれ大きさが異なる。生体肺移植はドナー(臓器提供者)から下葉の提供を受け、そのまま移植するのが一般的で、体の小さな乳幼児の場合、岡山大病院では中葉移植や下葉を分割する「区域移植」も選択肢としている。

 女児は間質性肺炎を患い、身長約80センチ、体重約8キロと1歳児程度の体格。父親の肺の大きさでは左肺下葉の区域移植が最適だったが、医学的理由で、より大きい右肺下葉しか移植できなかった。

 手術は昨年12月4日行われ、女児は順調に回復。生まれた直後から付けていた人工呼吸器も外れ、歌ったり、病棟内を三輪車で自由に走ったりできるようになった。

 世界初の成功となった1例目は2014年8月に行われ、当時2歳の男児に母親の左肺下葉を移植した。2例とも執刀した同病院臓器移植医療センターの大藤剛宏教授は「女児にとって父親の肺は大きく、移植できるぎりぎりのサイズだった。非常に難しい手術だったが、左右どちらの肺を用いても移植可能なことを証明できた」と話した。脳死による6歳未満のドナーが全国で7例にとどまっている現状を踏まえ「手術を待ちながら亡くなってしまう子どもを1人でも救いたい」とした。

 女児は7日にも退院できる見込み。両親は「手術後、初めて寝息を聞いた時は本当にうれしかった。家族みんなで眠れる日が待ち遠しい」と語った。

(2019年03月12日 更新)

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