テロメライシン実用化へ審査短縮 岡山大開発の対がんウイルス製剤

テロメライシンの「先駆け審査指定制度」の指定について会見する岡山大大学院の藤原教授(左)とオ社の浦田社長

 岡山大は10日、がん細胞だけを攻撃する同大開発のウイルス製剤「テロメライシン」が、優れた新薬などの早期実用化を狙いとする厚生労働省の「先駆け審査指定制度」の品目に指定されたと発表した。食道がんの患者に投与して放射線治療と併用する臨床研究で高い効果が確認されたことなどが理由。通常1年かかる国の審査期間が半年に短縮される。

 テロメライシンを製造する同大発のバイオ企業・オンコリスバイオファーマ(東京)が同制度に申請し、8日付で認められた。

 新薬は通常、臨床研究の後、実用化までに3段階(第1~3相)の臨床試験(治験)が必要だが、テロメライシンは臨床研究の成果を踏まえ、治験を監督する医薬品医療機器総合機構(PMDA)との話し合いで、第2相までで国に承認を申請できる見込みとなっている。さらに今回の指定により審査期間も短縮される。

 オ社は現在、同大病院(岡山市北区鹿田町)などで第1相の治験を行っている。第2相は、テロメライシンの製造などについてオ社と独占的な契約を結んだ中外製薬(東京)が担当し、22年以降の実用化を目指す。

 この日、岡山大大学院の藤原俊義教授(消化器外科)とオ社の浦田泰生社長が岡山市内で会見。藤原教授は「これまでの臨床研究と治験で副作用が少ないことも分かっている。承認されれば手術や抗がん剤の投与が難しい食道がんの患者にとって優しい治療法を提供できる」と話した。

 テロメライシン 風邪ウイルスの一種・アデノウイルスを無害化し、がん細胞を破壊するよう遺伝子を組み換えている。岡山大病院で2013~18年、食道がん患者に投与し放射線治療と併用する臨床研究で12人中8人の腫瘍が消失するなどした。

(2019年04月10日 更新)

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