(2)CT検査 岡山赤十字病院循環器内科医長 大澤和宏

大澤和宏医長

 心臓病は日本人の死因の第2位に位置する恐ろしい病気です。中でも特に恐ろしいのは心筋梗塞、狭心症などの冠動脈の病気です。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。その心臓に酸素を供給している血管が冠動脈です。冠動脈の病気になると心臓のポンプ機能が低下し全身に血液を送ることができなくなり、身体の不調をきたします。

 近年、冠動脈の病気の検査にはCT(コンピューター断層撮影)検査を用いることが多くなっています。この検査の強みは何といっても冠動脈の病気の有無を目に見える形で評価することができることです(図1)。

 検査で冠動脈に異常がなければほぼ100%冠動脈の病気がないといえます。その一方、もし冠動脈の病気が発見されたら内服薬の追加や変更、場合によってはカテーテル治療を行うことで、未然に心筋梗塞などの大きな病気を防ぐことが可能となります。

 検査は、通常外来で行います。その際にはいくつかの注意点があります。まず脈を落ち着かせることが大切です。当院では検査の1時間前に来院いただき、脈を落ち着かせるために安静にしていただきます。場合によっては脈を安定させるお薬を飲んでいただくこともあります。脈が落ち着いたのを確認した後、検査を行います。検査は15分程度で終わりますが、検査中にはしっかりと息止めをすることが大切です。息止めが不十分だときれいな画像を得ることが難しくなります。

 検査時には造影剤を用いるため、まれに吐き気や頭痛などの副作用を生じる場合があります。何か変調を感じる場合にはすぐにスタッフに声をかけてください。検査室には医師、技師、看護師など複数のスタッフが常駐しており、不明な点があれば遠慮なく声をかけていただければ、スタッフが丁寧に説明させていただきます。

 検査は冠動脈の狭窄(きょうさく)の有無だけでなく、患者さん一人一人の動脈硬化の「量」も測定することができます。動脈硬化が強くなると冠動脈に石灰化が起こります。冠動脈についている石灰の量を計測することで動脈硬化の量として測るわけです。石灰の量が多ければ多いほど将来心筋梗塞などの冠動脈の病気や脳梗塞など命にかかわる恐ろしい病気になる可能性が高いといわれています(図2)。そのような方には高血圧や高コレステロール血症、メタボリック症候群などの生活習慣病の厳密な管理が必要と考えられています。

 冠動脈に石灰が全くない方は、心筋梗塞や脳梗塞、心臓死を起こす可能性は極めて低く、おおむね長生きできるといわれています。これまでに喫煙歴がある場合や、高血圧や高コレステロール血症、糖尿病などがあり、動脈硬化を心配されている方は、かかりつけの医師と相談の上、一度冠動脈の石灰の量を計測してみてもよいかもしれません。

 重篤な心臓病の原因は高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、メタボリック症候群など多岐にわたります。それらのリスク因子を積極的に治療する「予防医学」が今後ますます重要になるでしょう。私たちはCT検査がその予防医学の一助になると考えています。

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 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 おおさわ・かずひろ 鳥取大学医学部卒。香川県立中央病院、岩国医療センター、大阪市立総合医療センター、岡山大学病院、米国UCLAなどを経て、2018年4月より岡山赤十字病院勤務。日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会認定医、日本内科学会認定医、日本内科学会総合内科専門医、米国心臓CT専門医。

(2019年06月17日 更新)

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