高齢者や子どもの熱中症に注意 兆候や応急処置、予防法は

「自分の感覚を過信せず、湿温度計などを活用して」と呼び掛ける岡山ろうさい病院の難波部長

「周囲の大人が早く症状に気付くことが重要」と話す倉敷中央病院の脇小児科主任部長

 気温の上昇とともに、熱中症になる危険性が高まっている。総務省消防庁の統計によると、6月17~23日に全国で救急搬送されたのは925人に上り、そのうち65歳以上の高齢者は497人(53・7%)と全体の半数を占めた。岡山県内の医療機関の医師は「体温調節の機能が衰えている高齢者はもちろん、発汗機能が未成熟の子どもたちも注意が必要」と指摘する。高齢者、子ども別に熱中症を見極める兆候や応急処置、予防法などを聞いた。

【高齢者の場合】知らぬ間に症状悪化も
岡山ろうさい病院救急部長 循環器内科部長 難波靖治


 熱中症になるメカニズムを改めて紹介する。夏場や運動時に体温が上がると、汗をかいたり、皮膚に血液を集めたりして、熱を体の外に逃がそうとする。特に汗は蒸発の際に熱が奪われる気化熱を利用する仕組みだ。

 ところが、あまりに汗をかくことで体内の水分・塩分が急速に失われたり、高温・高湿度の環境下で気化熱が作用しづらかったりすると、体の中にどんどん熱がこもり、熱中症になってしまう。

 中でも高齢者は体温調節機能に加え、暑さを感じる能力自体や発汗機能が低下しており、知らず知らずのうちに症状が悪化しているケースが多い。当院では5月ごろから熱中症とみられる高齢者の受診が目立ち始めている。

 軽度の症状はめまいや頭痛など。おかしいと思ったらエアコンの効いた屋内、屋外なら風通しの良い日陰で衣服をゆるめ、水分・塩分を補給しながら休むこと。農作業で屋外にいる場合などは定期的な休憩は必須と思っておいてほしい。

 嘔吐(おうと)や手足の運動障害などがみられたら中程度の熱中症だ。水やぬれタオルで体を拭い、太い血管が体表近くを通る首、脇の下、太ももの付け根といった部分を氷のうで冷やすといい。

 けいれん、意識障害があれば重度と診断する。迷わず救急車を呼ぶこと。軽度から一気に重度になる場合もあるため、症状が改善されないケースも場合によっては病院に行ってほしい。

 予防の基本はこまめな水分・塩分補給になる。ただ、水は一度に飲むと胃腸を壊す人もいるので、冷水ではなく常温の水を何度か分けて飲むようにしよう。就寝時には脱水症状を起こすこともあるので、寝る前とトイレ後、起床後にそれぞれコップ1杯の水を飲むようにしよう。

 屋外だけでなく、室内にいても熱中症になる。室温管理にも気を配るようにしよう。居間や寝室は過ごす時間が長いため、エアコンをためらわず使用することを心掛けたい。扇風機も直接体に風が当たらないよう上向きにすれば空気の循環につながる。大切なのは自分の感覚を過信しないこと。湿温度計を置き、気にする習慣を付けてほしい。室温30度未満を保つのが一つの目安になる。

 持病があることも多い高齢者の熱中症は、想像以上に症状が重くなる怖さもある。一瞬の迷いが命を失うことにもなりかねない。受診時には発症時の状況を知る人が付き添い、医師に説明してほしい。そうすることで、適切な治療が素早く開始できる。

【子どもの場合】汗や体温 大人が注意を
倉敷中央病院 小児科主任部長 脇研自


 大人に比べ、乳幼児は体内で水分の占める割合が高く、脱水症状に陥りやすい。さらに汗腺の発達が未熟でうまく汗をかけず、熱が体にこもりがちになる。

 最近は帽子をかぶらせるなど熱中症対策は各自で進んでいるようだ。ただ、意外に忘れがちなのがベビーカーでの散歩。地面からの照り返しが予想以上に強く、体温が上昇しやすい。子どもがいる高さの気温や湿度に気を付けよう。

 幼い子ほど暑さや体の不調を自分の言葉で十分に訴えることができない。汗や体温、顔色や泣き方など、周囲の大人が気に掛けることが重要だ。特に、ぐったりしている▽目線を合わせない▽呼び掛けても反応が鈍い▽数時間尿が出ていない―といった異変を感じたら病院を受診してほしい。

 応急処置は、まず体を冷やすこと。日陰やエアコンのある部屋に移動し、服を1枚脱がせて、風を送る。ぬるま湯を霧吹きで体にかけて扇風機を回し、気化熱を利用して体を冷やす。冷水を吹きかけると皮膚血管を収縮させ、かえって体温が下がりにくくなる。冷たい飲み物を飲ませすぎても、体内を冷やしすぎてしまう恐れもあるので、常温の水やスポーツドリンクなどを与えるように注意しよう。

 幼稚園児や小学生は、外遊びに夢中になると、休憩もせずつい長時間遊びがちだ。声掛けをする大人がそばにいないとなおさらその傾向は強いだろう。遊びに夢中になると、のどの渇きや気分の悪さといった熱中症のサインに気付きにくくなる。気温が高いと体から熱が逃げにくくなり、熱中症の危険性が高まることを考えると、35度を超えたら外遊びや運動は原則中止すべきと考えてほしい。34度以下でも、体力のない人や暑さに慣れていない人は運動をやめた方がいいだろう。ちなみに、気温だけでなく高い湿度でも発症の可能性は高くなる。

 予防には「早寝・早起き・朝ごはん」の実践が一番だ。ご飯、水分をしっかり取り、エネルギー補給後に活動する。服装については、直射日光から守る帽子の着用はもちろん、着衣が汗で肌にくっつくと、汗の蒸発を妨げ放熱の邪魔になるので、速乾性の高いインナーを着るなど工夫してほしい。冷感タオルや冷却スプレーといった熱中症対策グッズも効果的に使いたい。

 受診すべきかどうか迷ったら「小児救急医療電話相談」(#8000 または086―801―0018)に連絡するとよい。受付時間は平日(月~金曜日)は午後7時~翌朝8時、土、日曜日、祝日は午後6時~翌朝8時。

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 環境省は熱中症予防のため、気温や湿度などから各地の危険度を5段階(危険、厳重警戒、警戒、注意、ほぼ安全)で示す「暑さ指数」をインターネット(http://www.wbgt.env.go.jp/)で公開している。

(2019年07月01日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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