(4)検査について学んで自分の体の状態を知ろう! 岡山済生会総合病院 中央検査科主任 臨床検査技師 松本美智代

松本美智代臨床検査技師 

 糖尿病は自覚症状が現れにくく、症状が出たときにはかなり病状が進行しています。放置すると“怖い病気”ですが、一方で、自分の力で発症や進展を防止することができる“コントロール可能な病気”です(6月3日付『糖尿病が持つ二つの顔』参照)。良好なコントロールは、糖尿病治療の目標である「健康な人と変わらない生活の質(QOL)の維持と寿命の確保」につながっていきます。そのためにはさまざまな検査が必要となります。

■コントロールに欠かせない血糖値とヘモグロビンA1c

 【血糖値】は採血した時点での血液中の糖分(ブドウ糖)の量を指します。食事や運動、体調などによって常に変動しています。

 【ヘモグロビンA1c】は、血液中の赤血球に存在するヘモグロビンにブドウ糖が結合したもので、過去1~2カ月間の平均血糖値を知ることができます。ヘモグロビンA1cの数値を良好に保つには、日頃の血糖コントロールが大切です。糖尿病の合併症(神経障害、網膜症、腎症)を予防するには、数値を7・0%未満にすることが目標とされています。ヘモグロビンA1cの値に30を足して体温に例えると数値の良しあしがイメージしやすくなります=図1

 その他、血糖の状態を知る検査に【グリコアルブミン】があります。直近1~2週間の平均血糖値を反映し、ヘモグロビンA1cよりも短期間の血糖コントロール状態を知ることができます=図2

■血糖降下作用をもつインスリン

 【インスリン】は膵臓(すいぞう)のベータ細胞からでるホルモンで、ブドウ糖をエネルギーに変え、血糖値を下げる働きがあります。インスリンの量が不足したり、働きが悪くなると高血糖状態が続き、やがて糖尿病に至ります。インスリンが出ているのに働きが悪い状態を「インスリン抵抗性」といい、その要因に肥満や内臓脂肪の増加などが挙げられます。肥満や運動不足を解消することで、インスリン抵抗性を減らすことができます。

 また、インスリン治療をしていると、自分の膵臓から出たインスリンと、注射で外から補われたインスリンを区別できないことがあります。【C―ペプチド】は、膵臓でインスリンがつくられる時に生じて、インスリンと同じ割合で血液中に分泌されます。C―ペプチドを検査することで、自分の膵臓からでたインスリンの分泌能を知ることができます。

■血管年齢を知ろう

 高血糖の持続は血管をもろくさせ、動脈硬化を促進します。血圧や動脈硬化の程度を調べておくことは脳梗塞や心筋梗塞を防ぐためにも必要です。

 【頸(けい)動脈超音波】は、首にある、心臓から頭に血液を送る頸動脈という太い血管に超音波をあてて観察する検査です。頸動脈は全身の血管のなかでも動脈硬化の起こりやすい場所とされており、全身の動脈硬化の目安になります。

 【心臓足首血管指数(CAVI)】は、全身の血管の硬さをあらわす指標となり、「血管年齢」がわかります。仰向けに寝た状態で両腕、両足首の4カ所の血圧を同時に測定するだけの簡便な検査です。

 【脂質管理】も重要です。脂質異常症は動脈硬化を促進させる要因となります。血液検査で総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロールの数値を知っておくことも大切でしょう=表1

■継続治療が大切

 糖尿病と診断されると病態を知る検査、合併症を早期に発見する検査など、さまざまな検査が定期的に実施されます。継続的な病態コントロールこそが、健康寿命を延ばす第一歩となります。

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 岡山済生会総合病院(086―252―2211)

 まつもと・みちよ 岡山大安寺高校、岡山大学医療技術短期大学部卒。1994年から岡山済生会総合病院勤務。糖尿病療養指導士、NST専門療法士。

(2019年07月17日 更新)

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