第6回すてきなシニアライフ よりよい人生を生きるために

名木田恵理子氏

太田栄子氏

山田順子氏

居村貴子氏

福武まゆみ氏

 川崎学園(倉敷市松島)が倉敷市と共催する市民公開講座の本年度第6回が10月12日、くらしき健康福祉プラザ(同市笹沖)で開かれた。テーマは「すてきなシニアライフ~よりよい人生を生きるために」。川崎医療短期大学の講師陣が、在宅医療・介護における介護福祉士の役割、人生の最終段階をどう自分らしく迎えるかを考える「終活」にあたっての心構えなどを分かりやすく解説した。

座長あいさつ 川崎医療短期大学副学長 名木田恵理子

 近年、健康で自立した日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は少しずつ延びています。しかし、平均寿命も延びていますので、健康寿命と平均寿命との差は男性では9年近く、女性では12年超あります。個人差はありますが、誰かの助けを得なければ生活が難しい期間が、平均して10年前後あることになります。

 できるだけ長く健康で自立した生活を続けるには、食事や運動、睡眠などの改善に努め、定期的な健康チェックを受けることが大切です。同時に、心身が衰えて支援を受けなければ生活できなくなったとき、どうしたらよいのか準備しておくことも必要でしょう。

 利用できる医療・介護支援にはどのようなものがあるのか、自分らしく生きるためにはどこで、どのように暮らすのがよいか、人生の最後を締めくくる終活についても、元気なうちに考えておきたいと思います。

在宅医療の現状
川崎医療短期大学看護科准教授 太田栄子


 日本はまもなく超高齢多死社会を迎えます。ところが、病院のベッド数は抑制傾向にあることから、2030年には40万人以上の人の看取りの場所が確保できない可能性があると予測されています。このため、在宅(暮らしの場)においての看取りの体制づくりが必要となっていて、厚生労働省は病院での「治す医療」から、住み慣れた地域で人生の最後まで自分らしい暮らしを続けることを支える「治し支える医療」への転換を進めています。

 在宅とは自宅だけではありません。在宅扱いの施設として、サービス付き高齢者住宅や住宅型有料老人ホームなどがあります。

 在宅医療とは、患者さんや家族と相談の上、医療関係者が計画に基づいて定期的に訪問し、治療や経過観察をする医療行為で、24時間体制で対応することを言います。つまり、在宅で安心して暮らすための医療的な支援となります。

 ここで大切なのは、患者さん本人と家族の選択と心構えです。在宅医療を選択するのか、どこでどのように暮らすのかは患者さんと家族が決めるのです。気持ちが変われば、また十分に話し合って、そのときの自分に一番合ったものを選択することができます。

 在宅医療のサービスには、医師による定期的な訪問診療と緊急時の往診、看護師による訪問看護、理学療法士や作業療法士らによる訪問リハビリテーションなどがあります。

 在宅医療の大きな部分を占める訪問看護は、病気や障害をもちながら在宅療養を望む人に、日常生活の介助から医療処置まで多岐にわたって看護を提供します。利用できる回数や費用は保険等によって異なりますが、制度をうまく利用して自己負担を少なくして、十分なサービスを受けることも可能です。

ともに歩む介護福祉士パートI 生活を支える
川崎医療短期大学医療介護福祉科教授 山田順子


 現在、65歳以上の人がいる世帯を見ると、高齢者の1人暮らし、高齢夫婦のみの世帯が約6割を占め、これからも増えると予想されます。そんな中、どこで介護を受けて暮らしたいかというアンケートには、多くの人が自宅や医療・介護施設で、と回答します。今後は、住み慣れた自宅だけではなく、住み替えた有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などでも生活する人々が増えていきます。

 病気や障害がありながら自宅で暮らす場合、支えとなるサービスが訪問介護で、生活援助と身体介護があります。生活援助は、本人に直接関わることで、それがなされないと日常生活に支障が生じることが対象です。具体的には、日常的な調理や配膳、後片付け、買い物、掃除などです。本人以外の分の買い物をしたり食事を作ったりすることはできません。身体介護では、食事や入浴、排せつの介助、着替えや洗面、歯磨きなどをしてもらえます。

 施設で暮らす場合をみてみましょう。住宅型有料老人ホームは食事や洗濯、掃除などの生活支援サービスはありますが、介護は外部サービスとの契約になります。介護付き有料老人ホームは、生活支援に加え、排せつや入浴などの身体介護、機能訓練などのサービスが受けられます。

 サービス付き高齢者住宅は、高齢者の居住の安定確保を目的とした住宅で、日中は安否確認や生活相談サービスを行っています。特別養護老人ホームは、要介護3以上の認定を受けた人が利用できる施設です。

 どこで暮らしていても、加齢や病気、障害によってこれまでできていたことができにくくなることがあります。そんなときに生活を支える最も身近な専門職が介護福祉士です。介護福祉士がすてきなシニアライフを支援します。

ともに歩む介護福祉士パートII 在宅介護
川崎医療短期大学医療介護福祉科講師 居村貴子


 健康でいるためには適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠と休養が有効であることは間違いないでしょう。今日は身近にある新聞紙を使った「棒体操」を紹介します=写真。

 棒体操には姿勢矯正や柔軟性向上、認知症予防、転倒予防の効果があることが報告されています。無理なく、自分のペースで取り組んでみてください。

 次に、介護保険の在宅サービスの中から、通所サービスのデイケア(通所リハビリテーション)とデイサービス(通所介護)を紹介します。デイケアは、理学療法士や作業療法士などの資格を持ったリハビリ専門職による個別のリハビリテーションです。機能回復に重点を置き、ストレッチや歩行訓練などを行います。一方、デイサービスは、機能訓練指導員や看護師が携わることが多いようです。集団体操などの機能訓練をしています。

 利用時間は午前か午後、または午前から夕方まで。血圧測定などの健康チェックや食事、入浴、カラオケなどの趣味活動は共通です。それぞれの施設で工夫を凝らしたプログラムを用意しています。自分に合った利用をお勧めします。

よりよい最期を迎えるために
川崎医療短期大学看護科准教授 福武まゆみ


 私たちは、必ず最期の時を迎えます。この最期を「よりよい」ものにすることは、すてきなシニアライフを締めくくるために欠かせません。最期を考えることは「縁起でもない」と、避ける人も多いようですが、「残された人生をよりよく生きるための準備」と思ってみてください。

 近年、終活という言葉が流行しています。財産管理や遺言の準備、遺影やお墓など葬儀にまつわること、身の回り品の整理をしている方もいらっしゃるでしょう。また、病院や施設へ入所した時、希望する医療や介護の内容、死亡場所や病名の告知などについて考えておくことも大切です。

 医療機関では万一の場合、積極的な治療や延命措置を行うのかどうかを尋ねられます。最近では、苦痛の緩和だけで、延命措置は望まない方、自然なままの死を希望する方も増えています。死を迎えるに当たり、希望する形を家族に伝えておくことが大切です。

 ある調査によると、終活への関心は8割以上の人が持っているものの、7割以上は終活をしていないと報告されています。「まだ元気だから準備は必要ない。必要になってから考えればよい」と思っていないでしょうか。

 実は、体が弱ったり病気になったりすると、なおさら終活は考えられません。考える気力もわいてきませんし、自分や家族の最期を考えるのは無理かもしれません。だからこそ、元気な時から万一に備えて、自分と、残される人が困らないように考えておくことが重要になります。

 今からできる終活として、エンディングノートの活用があります。終末期医療に対する考え方、葬儀や遺言、相続などについて書き記しておくノートです。ご夫婦、ご家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。

(2019年11月04日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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