(2)少子高齢化時代の周産期医療 国立病院機構岡山医療センター産科婦人科医長 多田克彦、新生児科診療部長 影山操

双子の胎児のエコー写真(二絨毛膜性、妊娠10週)

NICUできょうだいの面会。超低出生体重児で出生した妹の沐浴(もくよく)を手伝うお姉ちゃんたち

多田克彦医長

影山操部長

■総合周産期母子医療センター

 2005年度より総合周産期母子医療センターに認定され、岡山県東部北部の周産期医療の中心的役割を担っています。産科(母体・胎児部門)および新生児科・小児外科(新生児部門)を中心に、母体を妊娠中から産後まで、赤ちゃんを胎児期から新生児・乳児・幼児期まで一貫してケアします。

 少子化が加速度的に進み、19年は出生数が90万人を割り込みました。母体・児の障害のない退院はもちろん、ご家族みなさんがずっと幸せに過ごせるよう取り組んでいます。

■多胎妊娠専門外来・産科

 対象となる患者さんはさまざまですが、今回は多胎妊娠(双子、三つ子など)への取り組みを紹介します。

 多胎妊娠は単胎妊娠と比べて早産や妊娠高血圧症を起こしやすく、また一つの胎盤を二人で共有する一卵性の双子(一絨毛膜(いちじゅうもうまく)二羊膜(にようまく)性双胎など)では、双胎間輸血症候群という赤ちゃんの循環に影響を与える病気が起こることが知られていますし、出産時には通常より出血が増加するリスクもあります。さらに産後は、育児を行うことに体力的あるいは精神的な負担を感じる方も多くいらっしゃいます。

 このように多胎妊娠は、単胎妊娠以上に妊娠中の全ての期間で注意しながら診させていただく必要があり、当院では多胎妊娠を少しでもよい出産、育児へとつなげることを目的として多胎専門外来を開いています(担当医・沖本直輝、塚原紗耶)。この外来では、多胎妊娠のリスクを妊婦さんと共有するために、また妊娠中や産後の不安などについても十分にお話を聞けるように診療時間を長めに確保しています。

■新生児集中治療室(NICU)・新生児の総合病院として

 成人医療では、集中治療室(ICU)、一般病棟、緩和ケア病棟、療養型病院など、状態によりいろんな病床がありますが、赤ちゃんには広義のNICU(NICUとGCUをあわせた病棟)しかありません。しかもNICUには早産・低出生体重児ばかりでなく、多くの正期産児も入院します。

 その疾病は多種多様=グラフ=なため、新生児科、小児外科、脳神経外科などの医師が連携するのはもちろんのこと、臨床心理士、理学療法士、退院調整看護師などがNICUに配置され、薬剤師、臨床工学技士などとも協力することが大切です。NICUという一つの場所が「新生児の総合病院」として機能するために、赤ちゃんの状態、家族のメンタルヘルス、退院後の養育環境などを踏まえ、多職種が協働する必要があります。

 当院のNICUには周産期専門医(新生児)6人、小児神経専門医1人、国際認定ラクテーション・コンサルタント1人が、看護師には新生児集中ケア認定看護師4人が、さらに周産期専任の臨床心理士1人が常勤し、医療・看護、栄養、心理、環境面から赤ちゃんとご家族をサポートしています。

 周産期医療には家族中心のケアが重要とされます。当院では両親は365日24時間いつでもNICUへ入室でき、祖父母、きょうだいも入室できます。全国的にもまだ実施施設の少ないきょうだい面会ですが、当院は10年以上前から実践し、入院中の赤ちゃんがご家族といつでも一緒に過ごせる環境づくりを目指しています。

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 国立病院機構岡山医療センター(086―294―9911)

 ただ・かつひこ 岡山大学卒。1991年から岡山大学病院、2001年から岡山医療センターに勤務し、04年より産婦人科医長。専門は産科医療。

 かげやま・みさお 岡山大学卒。岡山大学病院、大阪母子医療センターなどを経て2000年より岡山医療センターに勤務し、09年より新生児科医長、19年より同診療部長。専門は新生児医療、とくに超早産児の呼吸循環管理。

(2020年04月06日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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