大人の発達障害について メンタルヘルス講座49

 慈圭病院(岡山市南区浦安本町)が2019年12月7日に開いたメンタルヘルス講座で、渡部一予病棟医長が「大人の発達障害について」をテーマに話した。講演要旨を届ける。



発達障害とは

 発達障害は、生まれつき脳機能の一部に障害があり、発達の著しい偏りを生じる状態で、その結果家庭や学校や職場でうまく適応できなくなるのが特徴です。発達障害の特性は、成長とともに経験を積んで少しずつ目立たなくなることもありますが、基本的な特性は大人になってもほとんど変わることはありません。

自閉スペクトラム症(ASD)

 ASDの有病率は1~2%、男性は女性の約4倍と報告されています。ASDの基本的な3つの特性は①社会性の障害(人との関わり方が苦手)②コミュニケーションの障害(言葉や表情を介したコミュニケーションが苦手)③想像力の障害(変化が苦手でこだわりが強い)、新たに加わった特性として④感覚過敏または過鈍(音や触れられることに敏感)があります。

注意欠如多動性障害(ADHD)

 ADHDの有病率は学童期で3~7%程度、成人3~4%、男性は女性の約2倍と報告されています。①不注意(気が散りやすい)②多動性(落ち着きがない)③衝動性(よく考えずに行動する)という3つの基本的な特性があり、特性の現れ方により3つのタイプに分けられます。不注意は大人になっても持ち越しやすく、思春期以降も目立ちやすい特性です。

発達障害かなと思ったら

 子供は「児童精神科」ですが、大人は「精神科」を受診します。しかし、大人の発達障害の診断は非常に難しく、これまでごく限られた医療機関でしか受けられませんでした。発達障害者支援センターでは、専門の医療機関や活用できるサービスなどの情報提供をしてくれます。

二次障害

 発達障害の特性で生きにくさを感じ悩んでいる人は、そのストレスで二次的にうつ病など精神疾患を発症することがあります。併存症や二次障害の治療は薬物療法がメインになりますが、ベースにある発達障害への対応をせずに二次的に現れた障害を単独で治療しただけでは長期的な症状の改善は望めません。それぞれの状態に合わせ、両方の治療や対処法を考えていく必要があります。ADHDに関しては、薬によって特性を軽減することができます。

就労支援

 発達障害と診断された方は、発達障害者支援センターに相談すると地域障害者職業センターや障害者就労・生活支援センターなど就労支援機関を紹介してもらえ、専門的な就労支援を受けることができます。

 大人の発達障害は、特性に合わせて環境調整や対処法を工夫し、これから生活していくためのライフスキルを身に付け、「できる仕事」に就業し、自分の力で生きていくことがゴールです。

(慈圭病院「きょうちくとう」はる2020から転載)

(2020年04月14日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

医療人情報

  • 病棟医長  渡部 一予

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