経鼻手術の延期や中止増加 岡山県内 医師らコロナ感染懸念

 新型コロナウイルスの感染拡大防止として、岡山県内医療機関の耳鼻咽喉科や脳神経外科で、鼻から行う手術や検査などを延期や中止にするところが増えている。処置中にウイルスの混じった「エーロゾル」と呼ばれる微粒子が空気中を漂い、医師らが感染してしまう恐れがあるためという。他の診療科を含めて緊急性の高くない手術全般を控える病院も出ており、各医療機関では患者に理解を求めている。

 鼻から器具を入れて行う「経鼻手術」は、せきなどを誘発するほか、施術に伴って体液とともにウイルスが手術室内に飛び散るなど、医療従事者への感染が拡大しやすいという海外の報告例が複数寄せられている。そのため、日本脳神経外科学会や日本耳鼻咽喉科学会といった関係学会は現在、急を要さない手術の延期を推奨している。

 これを踏まえ、津山中央病院(津山市)は今月9日、耳鼻咽喉科での新たな手術は見送り、すでに手術が予定されている患者にも延期を勧める―などとする方針を公表。20日にはさらに歯科口腔(こうくう)外科の手術と外来診療も制限することを明らかにし、ホームページで周知している。

 倉敷中央病院(倉敷市)でも耳鼻咽喉科と脳神経外科での不急の経鼻手術を延期。岡山大病院(岡山市)は両科の経鼻手術を当面の間、延期や中止にするとの方針を6日に発表したが、国が新型コロナの重症者向け病床を確保するよう都道府県などに通知したのを受け、他の診療科を含めた手術全般について不急の場合は当面延期することを決めた。

 岡山赤十字病院(同市)は「最終的には主治医が判断することになるが、急を要さない手術は極力延期している」と説明。いずれの病院も、がん治療や交通事故による高度外傷といった緊急性の高い手術は通常通り行っているとする。

 耳鼻咽喉科の診療所でも、エーロゾルによる感染を避けるため、霧状の薬を吸入してのどや鼻の奧に送り込む「ネブライザー治療」を中止したり、行う対象を絞ったりするケースが相次ぐ。ごく一般的な治療法で、アレルギー性鼻炎などに有効とされる。

 藤本耳鼻咽喉科クリニック(同市)では患者の体調を慎重に見極めた上で実施を見送るケースもあるといい、藤本政明院長は「治療に影響が出るが、感染予防にはやむを得ない」と話した。

(2020年04月30日 更新)

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