(3)がん検診 おおもと病院総看護師長 秋山裕恵

 日本人の2人に1人は生涯に何らかのがんを発症し、死因の第1位はがんであることは一般にも広く知られるようになりました。一方で必ずしも「がん=死」では、なくなってきていることも事実です。それには早期発見・早期治療がとても大切になります。

 がん検診率は、日本は4~5割程度で先進国では低い値となっています。2016年に行われた世論調査でがん検診を受けない理由に「受ける時間がないから」「健康に自信があるから必要性を感じない」と回答した方が合わせて半数以上ありました。がん検診を受けるメリットが十分浸透していないように感じられました。

 がん検診を受けるメリットはいくつもあります。早期発見・早期治療で命が救われる可能性が高まりますし、早期にがんが見つかれば治療の経済的、身体的な負担が軽くて済みます。自覚症状が出て医療機関を受診したときはがんが進行しているケースが多いのも事実です。

 当院でも、岡山市のがん検診を受け付けています。胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸(けい)がんの検査を実施しており、いずれも簡便な方法で行えます。公的な補助金が出るので自己負担は軽くなります。

 肺がんの検査は胸のレントゲンです。この病気は進行してから症状が現れるため喫煙歴がない方も受けることをお勧めします。胃がんの検査は従来と同じくバリウムを用いたレントゲン撮影を行いますが、2年に1度は胃内視鏡検査が受けられます。バリウムが苦手な方や精密検査が必要と指摘されたことのある方は胃内視鏡を受けられる方がいいでしょう。

 乳がんや子宮頸がんの検査は受診に抵抗があるかもしれませんが、乳がんの発見率は比較的高いので小さいうちに見つかると、治癒する可能性は高くなります。昨年度、当院で乳がん検診を受けて精密検査をするよう指摘された方は252人。そのうちがんが見つかった方は14人(3人は40代)でした。

 乳がんは自己検診で発見できる数少ないがんの一つです。定期的にチェックして、自分の乳房の状態を知っておけば、少しの変化にも気づきやすくなります。また、乳がんは40歳以上で罹患(りかん)率(かかる率)が高くなりますが、20~30代で発症することもあります。当院でも以前、20代前半の方が胸にしこりを見つけて来院されました。がんと診断されましたが、化学療法や温存手術、放射線治療も受けられ、今では仕事に復帰されています。どの世代の方もいつもと違うと感じた時はためらわず乳腺科を受診してください。

 現在では、学校でもがん教育が行われています。がんの種類や治療法、予防につながる生活習慣、検診の重要性などについて子どもたちは学んでいます。がんという病気を正しく理解し、命の尊さを学び健康に生きていく知識を身につけることは重要です。これからの人生を元気で楽しみながら過ごすために、がん検診には時間を惜しまず足を運んでください。

     ◇

 おおもと病院(086―241―6888)。連載は今回で終わりです。

 あきやま・ひろえ 大安寺高校、川崎医療短期大学卒。川崎医科大学附属病院を経て1990年におおもと病院に入り、2019年から総看護師長。消化器内視鏡技師。

(2020年06月01日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

タグ

関連病院

PAGE TOP