(4)患者に寄り添う緩和治療 天和会松田病院緩和ケア認定看護師 藤範梨絵

藤範梨絵氏

 超高齢社会となり、いまや2人に1人が「がん」と診断される時代になってきました。当院は消化器専門病院として、消化管(胃や大腸)、肝胆膵(すい)のがんの患者さんを多く治療させていただいております。

 私は「緩和ケア」の認定看護師資格を取得しており、がん患者さんとお話しをさせてもらう機会が多くあります。初めて医師から「がん」であることを告げられた後、お話をすると、「もしかしたら『がん』かもしれないと思いつつも、忙しいから病院には行ってなかった。私が行かなかったんだから仕方がない」という言葉によく出合います。まるで自分自身に言い聞かせるように語るその姿に、何度立ち会っても毎回返す言葉がなかなか見つかりません。告知の日から、手術、抗がん剤治療、放射線療法などさまざまな治療が始まり、患者さんは多くの不安を抱えられております。

 みなさん「緩和ケア」といった言葉になじみはありますでしょうか? 緩和ケアとは、がんに伴う心と体のつらさをやわらげる治療です。「緩和ケア」=「末期がんでもうすぐ亡くなる患者さんが受ける治療」といった印象を持つ方が多いと思いますが、治療の始まり(診断)の時期から専門的なケアが必要とされており、緩和ケアはがん治療の大きな支えとなります。

 緩和ケアで行う治療の例としては次のようなものがあります。

 (1)どのように治療していきたいか、最期の時をどう迎えたいかなどの意思決定支援

 (2)がんそのものや、治療に伴う痛み、つらい身体症状へ特化した専門的治療

 (3)病名、予後についての告知の際や、心がつらく「生きている意味があるのか?」などと考えてしまう時の精神的支援

 (4)就労の問題や経済的な問題、または家族の問題など社会的支援

 薬や処置の必要もない、一見するとそれは治療なのだろうか? と思う内容も緩和ケアには含まれます。患者さんと家族をとりまく環境まで視野に入れて支援することが多く、その内容が多岐にわたるため、医師のみならず薬剤師や医療ソーシャルワーカーなど多職種で協力し合い、人と人のつながりを大切にすることも治療の一環となるのが緩和ケアです。

 当院には、緩和ケアチームが存在し、多職種で連携し患者さんの苦痛が緩和されるよう活動しています。特に心の苦しみは、「話してもどうにもならないだろう」と思われがちで、きっかけがなければ言い出しにくいかもしれません。それでも、話すことで少しでもお力になれるよう、心のふれあいを大切にしたいと思っています。

 また当院では、訪問看護ステーションも併設しており、通院が困難になった患者さんや、人生の最期を自宅で迎えたい方への訪問診療、訪問看護も行っております。ご希望等ございましたらご相談ください。

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 天和会松田病院(086―422―3550)

 ふじのり・りえ 鳥取短期大学幼児教育学科卒業後、島根県立松江高等看護学院にて学び、看護師資格を取得。2009年より医療法人天和会松田病院に入職し、12年緩和ケア認定看護師を取得。18年より外来所属。

(2020年12月07日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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