子どもの内斜視とデジタル機器 川崎医大・三木教授に聞く

「内斜視の手術は全身麻酔など負担が大きい。予防が大切」と話す三木教授

 暮らしの中にはスマートフォンやタブレット端末、携帯用ゲーム機などデジタル機器があふれている。子どもたちも動画などを見る頻度が増え、目への負担は高まるばかりだ。新型コロナウイルス禍で自宅にいる時間が長くなればなおさら。斜視など目の不具合への影響も心配だ。小児眼科が専門の三木淳司(あつし)・川崎医科大教授にリスクと付き合い方を聞いた。

 「デジタル機器の過剰使用と目への影響は医師の間でも今注目されているテーマです」。日本弱視斜視学会などの聞き取り調査(2018、19年)では、過剰な使用について所属医師の7割が、視線が内側に向いてしまう後天性内斜視の発症要因と回答しており、同学会理事の三木教授もそう考える一人だ。

 三木教授によると、文字を読む際の目と画面の平均距離は従来の本なら約30センチなのに対し、特に画面が小さいスマホは20センチまで縮まる。立体感や遠近感を身に付けるために大切な「両眼視機能」は6歳ごろまでに確立されるが、わずか10センチの差でも両目の視線を内側に向け続ける状態が目と脳に負担を与え、物が二重に見えてしまうなど、正常な視覚機能の発達が損なわれる恐れがある。

 また、小さい頃の内斜視は、自覚症状が無く保護者も気付きにくい。低年齢の発症ほど治りにくいという。三木教授は「スマホ視聴は人類が体験したことのない目の使い方。30センチ以上離して使わせることを徹底してほしい」と警鐘を鳴らす。

 青少年のインターネット利用環境実態調査(内閣府)によると、スマホを利用する小学生は17年度23・0%、18年度45・9%、19年度49・8%と年々増加している。使用時間の目安はどうなのか。

 さまざまな説がある中で三木教授が教えてくれたのは、米国で導入されている「20―20―20ルール」。画面を見る作業20分ごとに20フィート(約6メートル)先を20秒間見るという法則だ。遠くに視線を向けることで目の緊張を取る効果があるとされる。

 使う時の姿勢も大切だ。寝ながらスマホやタブレット端末を見ると、画面が近づくだけでなく、上に傾くため、両目をバランス良く使えない。スマホを固定する台を使うなどの対策も必要という。

 デジタル機器の使用に限らず、コロナ禍で自宅にいる時間が長いと、物を見る距離が近くなりがちで近視化のリスクもある。換気で窓を開ける役目を子どもに任せて外を眺めさせる時間をつくるほか、散歩もおすすめだ。

 子どものスマホ利用に関しては、世界保健機関(WHO)がガイドラインを公表した。1歳以下では画面を見せず、2歳以上でも1日あたりの使用を1時間以内に抑える―と提言している。三木教授は「コロナ禍で娯楽が減り、子どももストレスをためがち。無理に禁止するよりは、親子で楽しめる外遊びなどに誘い、機器を手にする時間を減らす工夫をしてみては」と話している。

(2021年02月04日 更新)

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