(3)不整脈 心臓病センター榊原病院循環器内科部長 伴場主一

伴場主一氏

 最近アップルウオッチでの心電図アプリの利用が可能になりました。スマートウオッチなどの普及で今後より一層心電図が身近になると思われます。

 心臓のすべての病気が分かるわけではありませんが不整脈の診断には特に有用となります。不整脈はいつも出現していることは少ないので、その瞬間の記録がないと診断に至らないことが多いからです。胸や脈がおかしかったのに病院に着いたら治まっていた、強い動悸(どうき)が救急車の来る前に落ちついた―などはよくあることです。

 心電図が身近になると動悸があるとき、胸に違和感があるとき、脈が変だと思ったときに心電図が記録できますので不整脈の早期診断につながります。不整脈の中でも特に心房細動の診断への期待が大きいです。

 心臓は二つの筋肉の固まり(心房と心室)で構成されますが、心房の筋肉が震えている状態が心房細動です。心房細動になると脈は完全にばらばらに乱れます。この脈の乱れを自分で判断するのは難しいですが、心電図であれば診断できます。

 心房細動は直接生命をうばう病気ではありませんが、脳梗塞の原因となる不整脈であり早期の診断が大切です。動悸などの自覚症状で不整脈になるとすぐに分かるだろうから、何かがあれば病院に行けばよいのではなく、心房細動になっても自覚症状がないことの方が多いぐらいです。そのため日本不整脈心電図学会では毎年3月9日を脈の日と定め、検脈・脈の自己チェックの重要性を説いており、心房細動の早期診断を目指しています。

 心房細動は高齢になるほど発症リスクが高まりますから、65歳以上の方では特に日常の脈のチェックを勧めています。家庭血圧計でも血圧と脈拍数が表示されますので脈の異常の発見につながることも多いです。

 心房細動と診断された場合の脳梗塞の予防には、生活習慣の改善、血栓予防の薬、心房細動そのものの治療(薬、カテーテル治療)が有効です。

 改善すべき生活習慣としては、肥満、運動不足、喫煙、飲酒習慣があります。たばこが健康全般に悪いのは社会的に認知されていますが、アルコールは不整脈とは相性が悪いです。毎日習慣的に飲酒する必要はないです。

 血栓の予防薬は75歳以上の方や高血圧、糖尿病など持病がある場合は勧められます。早期に診断された心房細動であれば、正常の脈を維持できる可能性も高く、不整脈そのものの治療も有効です。診断が確定した場合は、循環器や不整脈の専門医に相談するのも良いと思われます。

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 心臓病センター榊原病院(086―225―7111)

 ばんば・きみかず 岡山大学医学部卒。2009年より心臓病センター榊原病院勤務。専門領域は不整脈のカテーテルアブレーション治療。総合内科専門医、循環器専門医、学会認定不整脈専門医。

(2021年03月01日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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