日本を代表する「医療・保健のエンジン」に

 岡山大学病院は、1870(明治3)年の岡山藩医学館大病院が開設して以来、150年を超える長い歴史と伝統を受け継いできた病院です。関連病院は、中国・四国地方を中心に約250施設にのぼり、同地方における医療・保健分野の診療・教育・研究面での「エンジン(原動力)」とも言うべき重要な役割を果たしてきました。

 当院の手術件数は年間1万件を超え、常に全国国立大学病院トップクラスの実績です。わが国初の生体肺移植や優れた臨床的実績を持つ肝臓、腎臓などの臓器移植も多数、行われています。高難度手術、なかでも小児心臓血管外科手術のレベルの高さは有名で、諸外国からも多くの患者さんが来られます。ロボット支援下手術や画像ガイド下にカテーテルなどを用いて、がんや心臓病などの治療を行うインターベンショナルラジオロジー(IVR)などの低侵襲医療も積極的に実施しています。

 希少疾患やがんに対する集学的治療などの高度先進医療も提供してきましたが、これからの発展が期待される免疫療法やゲノム医療も強力に推し進めています。2015(平成27)年8月に当院は、中国地域の「造血幹細胞移植推進拠点病院」に選定され、白血病などの難病に対し多くの造血幹細胞移植を実施するとともに、中国地方の移植医療の推進に取り組んできました。また、中国・四国地方で最初に遺伝子導入された免疫細胞療法(CAR―T細胞療法)の提供施設として認定され、多数の患者さんに最先端の治療を届けています。

 2020年からのコロナ禍にあっては、当院の強みでもある充実した集中治療体制を活かし、人工呼吸器やECMO(人工肺とポンプを用いた体外循環による治療)を必要とする重症なコロナ患者さんを県内で最も多く受け入れ、治療を実施してきました。また、ホテルに宿泊療養する軽症の患者さんをオンラインで診療することにより、患者さんの容体急変の早期発見に貢献することができました。

 岡山大学病院は、最良の医療を提供することに加え、研究の推進も重要な役割と考えています。当院は、厚生労働省より中国四国地方唯一の「臨床研究中核病院」として認定され、文字通りわが国の臨床研究の拠点となりました。さらに当院は、文部科学省の「橋渡し研究拠点」でもあり、がんの遺伝子治療、心筋細胞の再生医療研究など基礎医学から臨床医学につながる橋渡し研究が盛んに行われています。また、「がんゲノム医療中核拠点病院」にも認定されています。がんの遺伝子を調べ、患者さん毎に最適な医療を提供するがんゲノム医療が急速な進歩を遂げていますが、当院は、拠点病院として個々のがん患者さんに最適な医療を提供するだけでなく、治験・先進医療を主導し研究開発を進めることにより、がんゲノム医療を牽引しています。医療を大きく変えるようなイノベーションは、分野を横断する研究環境の革新が基盤となります。オープンイノベーションラボと呼ばれる院内外に開かれた研究環境で、異分野が融合し、産学官の連携が推進できる場所を提供していますので、ぜひ、お問い合わせください。

 そして、当院は優れた医療人材を育てる場でもあります。すべての人とモノがつながり、様々な情報が共有され、今までにない新たな価値が生み出されるSociety 5.0の社会にあって、医療人にも取り巻く社会変化への対応が求められています。デジタル化を推進できる人材を含め、社会変化に柔軟に対応できる医療人材を発掘と育成し、地域・世界に輩出していきます。また、病院としてもデジタル対応力で患者さんから選ばれるように組織の在り方を問い直しています。

 私たちは、「患者さんのために」「医療・保健の発展のために」「自己ではなく社会のために」を合言葉に、岡山大学病院が日本を代表する「医療・保健のエンジン」に成長することをビジョンとしています。これからも職員一丸となって患者さんと社会・地域からの期待に応えられるよう全力で取り組んでまいりますので、今後とも岡山大学病院をよろしくお願いします。

(2021年04月01日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

医療人情報

  • 病院長  前田 嘉信
    岡山大学血液・腫瘍・呼吸器内科学教授などを経て、2021年4月から病院長。専門は血液学。

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