(5)肝臓に優しい日常生活の過ごし方 岡山済生会総合病院肝臓病センター看護師長 高橋真由美

ZOOMで開いた肝臓病教室

高橋真由美氏

 肝臓は横隔膜のすぐ下、右寄りの上腹部にあります。体内で最も大きな臓器です。成人での重さは約1キロです=図1

 肝臓は栄養素の代謝・貯蔵・アルコールの解毒など「生体の化学工場」と呼ばれるほど、多様な働きをしています。B型・C型ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなって、本来の肝臓機能が破壊された病状を肝硬変といいます。

 肝硬変は、その程度によって「代償性」と「非代償性」に分けられます。肝臓の機能が保たれ症状がない肝硬変を「代償性肝硬変」と呼び、肝機能を代償することができず、黄疸(おうだん)・浮腫・腹水・肝性脳症などの症状が起こる肝硬変を「非代償性肝硬変」と呼びます。

 肝硬変の患者さんは、自分の肝臓の状態を理解し、適切な自己管理を行うことが大切です。そのためには、家族や周囲のサポートが必要になります。

 それでは、肝硬変患者さんの肝臓に優しい日常生活の過ごし方をお伝えします。

 (1)規則的な生活を心がけ、翌日に疲れを持ち込まないようにしましょう。十分な睡眠時間をとることが大切です。

 (2)体のかゆみ、眼球や皮膚が黄色くなる、尿の色が濃くなると、黄疸症状が出ている場合があります。皮膚や眼球の色が黄色くなっていないか、意識して確認しましょう。

 (3)足のむくみや体重の増加は、浮腫や腹水の出現を意味しています。毎日決まった時間帯に体重測定をすることで、浮腫や腹水に早めに気付けるようになります。食事中の塩分も6グラム/日以下を心がけましょう。

 (4)便通のコントロールを行い、毎日十分な量の便が出るように調整しましょう。大便が大腸内にたまっていると、アンモニアの発生が増して肝性脳症を起こしやすくなります。肝性脳症は、字がうまく書けなくなったな? 場所や日付が分からなくなる、家族や周囲の人が、あれ? ちょっとおかしいな? 夜寝なくなったな? などで気が付くことが多いです。ちょっとした変化でも早めにかかりつけ医へ相談してください=図2

 (5)肝臓の機能が低下すると、筋肉が肝臓の代わりに働き、筋肉量が低下することで、サルコペニアやフレイルになりやすくなります。筋肉を落とさないことが大切です。無理ない程度で運動を心がけましょう。運動の目安として、運動後心地よい疲労感が得られ、翌日に疲れが残らない程度の運動をしましょう。

 当院の肝臓病センターの紹介です。入院病棟では、毎週火曜日に肝臓病棟カンファレンス、毎週木曜日に退院支援・DPC・ポリファーマシーカンファレンスを行い、入院中の患者さんに最善の医療・看護提供ができるよう多職種で検討しています。

 また、1997年から行っている肝臓病教室は、2020年から自己免疫疾患の影響を受ける肝炎などに着目し、膠原病(こうげんびょう)チームと共同で年4回開催をしています。コロナの影響で、岡山済生会総合病院と岡山済生会外来センター病院をZOOMでつなぎ開催をしています。21年は3月16日に第1回目を開催しました。興味のある方は、病院ホームページをご覧になり参加してください。

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 岡山済生会総合病院(086―252―2211)

 たかはし・まゆみ 岡山済生会看護専門学校卒。1997年より岡山済生会総合病院勤務。産婦人科病棟、整形外科病棟、呼吸器病センターを経験。2019年から肝臓病センター所属。看護師長。

(2021年04月05日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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