(6)地域包括ケア病棟での在宅復帰支援への取り組み 心臓病センター榊原病院循環器内科部長・地域包括ケア担当部長 川元隆弘

川元隆弘氏

 わが国は高齢化率25%超と世界一の高齢化国であり、今後も進行が見込まれています。高齢者は多くの疾患を併せ持っており、回復力も低下しているため、手術などの治療後の回復に時間がかかり、在宅復帰が困難となっています。また独居の高齢者も増加しており、各種介護サービスを導入する手続きすら困難な場合も見受けられます。

 こういった高齢者の医療・介護を包括的に支える仕組みとして2013年に地域包括ケアシステムが提唱され、翌年より地域包括ケア病棟が新設されました。この地域包括ケア病棟では医療的なサポートに加えてADL(日常生活動作)維持のためのリハビリテーションと介護保険を中心としたサービスの調整を行い、高齢者の在宅復帰を支援することになります。入院の対象となるのは以下の場合です。

 【ポストアキュート】

 急性疾病に対し加療後、在宅復帰のためにリハビリやサービス調整をします。

 【サブアキュート】

 食欲低下、脱水、転倒などの比較的軽症の疾病に対して加療・経過観察を行います。

 【リハビリテーション】

 心臓病、関節痛、脳梗塞などの慢性疾患に対するリハビリを行いADLの改善を目指します。

 【レスパイト】

 介護者の疲労、不在などの際に、一時的に入院していただき介護サービスを提供します。

 いずれの場合でも在宅復帰を目標として多職種が協働して支援し、最長60日間の入院が可能となっています。

 当院の地域包括ケア病棟は現在51床で運用しており、月平均50~60人の入院があります。内訳は院内転棟が36%、眼科手術や糖尿病などの予定入院が49%、他院からの転院が5%、経過観察・リハビリ・レスパイト入院が10%となっています。在宅復帰率は開設以来90%以上を維持しており、充実したリハビリ体制ときめこまかな医療連携がその特徴としてあげられます。

 理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が必要に応じて専門的なリハビリ介入を行っており、整形外科などの術後リハビリに加え、高次脳機能障害、嚥下(えんげ)障害などに対してもリハビリが可能です。また認知機能低下を認める場合には認知症ケアチームが認知機能評価を行い、せん妄、不眠、問題行動などに対し助言を行います。

 ADLや認知機能が改善した段階で退院後の希望をうかがい、介護福祉サービスの調整をいたしますが、退院後を見すえ、担当ケアマネージャーと綿密な連携をとりながら行っています。退院前にはカンファレンスを開催し、病院スタッフと在宅スタッフ、病客さまで情報を共有し、できるだけ病客さまの希望に沿えるようにしています。

 超高齢化社会の到来を迎え、今後も病客さま、ご家族さまの希望に沿ったサービスを提供できるように努めてまいります。

     ◇

 心臓病センター榊原病院(086―225―7111)

 かわもと・たかひろ 京都大学医学部卒。神戸市立中央市民病院にて研修し、京都大学大学院、川崎医科大学循環器内科講師を経て2017年より心臓病センター榊原病院勤務。総合内科専門医、循環器専門医、医学博士。

(2021年04月19日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

タグ

関連病院

PAGE TOP