(6)チームみんなで切れ目のないサポートを~外来から始まる退院支援 岡山市立市民病院入退院管理支援センター係長 兒子愛子(医療ソーシャルワーカー)

兒子愛子氏

 病気やけがで治療が必要になったとき、患者さんご自身やご家族はさまざまな心配事や困りごとを抱えることがあります。それは治療後のリハビリや介護、仕事への復帰、医療費や生活費のことも含め多岐にわたります。

 入退院管理支援(PFM)センターでは、患者さんやご家族、関係者の方からの相談をお受けし、必要とされる支援の提供および地域の医療・介護の連携先へのコーディネートを行っています。

 相談支援業務の中心は、治療後の在宅復帰の準備やリハビリテーションおよび療養継続を目的とした転院調整など、いわゆる「退院支援」と言われる業務です。

 高齢の方や長期の療養を必要とする患者さんは、急な入院・治療に限らず、予定の入院や手術でも、慣れない入院生活や治療後の経過などで身体の機能が低下し、退院後の生活に不便が生じることがあります。

 当院では、患者さんやご家族が安心して治療を受け、治療後にはできるだけ早くスムーズに元の生活に復帰できるよう、または新たな療養先や生活の場所へ移行できるよう、退院支援看護師またはMSW(Medical Social Worker=医療ソーシャルワーカー)が対応しています。

 予定入院の場合、当センターでの手続きの際に事務・療養支援看護師がご自宅での生活や介護サービスの利用状況、入院や今後の治療に関する心配事等をお伺いします。この時、在宅での療養・介護に不安があれば、介護保険制度や具体的なサービス利用について紹介し、主治医や病棟看護師、退院支援担当者と情報共有のうえ引き継ぎます。

 入院前から在宅や施設で介護サービスを利用している患者さんについては、ケアマネジャーや施設相談員等と入院前や入院直後から連絡を取り合うことで、治療後のリハビリの目標設定や退院の準備に必要な情報提供を依頼するなど、治療後の退院支援を見据えた連携を開始します。

 患者さんやご家族、ケアマネジャーなどから得られた情報は、退院支援の目標設定にとても重要です。退院支援スタッフは、患者さんが退院後に地域でどのような治療を継続していくのか、どのような生活を送りたいかなど、患者さんやご家族の気持ちを尊重しながら意思決定や療養生活への支援を行うことを目指します。

 患者さんの入院後、数日以内に療養に関わる医師・看護師・リハビリ・退院支援等担当者が集まり、治療方針に基づき、退院に向けた計画を話し合います。退院前には、必要に応じて院内だけでなく地域生活を支える医療・介護の関係者とも話し合い(退院前カンファレンス)、病院から地域へのスムーズなバトンタッチを図ります。

 また、体力や筋力の低下で治療後すぐに自宅に戻ることが困難と考えられる場合や、住宅改修など生活復帰に向けた準備に時間を要する場合などには、必要なリハビリを継続できる医療機関への転院や施設利用の提案・調整を行うことがあります。退院支援スタッフは、患者さんはもとよりご家族の意向や実情を詳しく伺い、目標とする生活の場所にステップアップしていくために必要な医療・サービスが提供できる転院・入所先を提案するように努めています。

 当院の退院支援は、患者さんの入院が決定したときから開始されます。「これから治療だというのに、退院の話なの?」と、感じられるかもしれません。しかし、これは、治療後の退院先が患者さんにとって安心・安全な場所であるように、何より、患者さんが患者さん自身でこれからの生活や過ごし方を決めていただくための大切な作業の一つなのです。

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 岡山市立市民病院(086―737―3000)

 にご・あいこ 岡山県立大学大学院修了。岡山済生会総合病院を経て2015年に岡山市立市民病院入職。21年4月から現職。社会福祉士、精神保健福祉士。

(2021年04月19日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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