CGRP 恐怖の記憶和らげる効果 岡山理科大の橋川准教授ら確認

橋川成美准教授

 岡山理科大理学部の橋川成美准教授(薬理学)らのグループは、神経伝達物質「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)」に、過去の恐怖体験の記憶を和らげる効果があることをマウス実験で突き止めた。災害や事故などが引き起こす心的外傷後ストレス障害(PTSD)の新たな治療薬開発につながる成果として注目される。

 グループは、底に電気が流れる箱で恐怖を刷り込んだマウス16匹のうち、8匹の脳にCGRPを注入した。16匹を箱に戻したところ、注入群は活発に動き回ったが、非注入群は目を閉じて震えて動くことができなかった。

 マウスの脳を詳細に調べると、CGRPを注入した8匹はストレスを緩和するタンパク質「Npas4」が注入しなかった8匹よりも平均で3倍ほど増加しており、「恐怖心の抑制につながったのではないか」(橋川准教授)と結論付けた。

 グループは、うつ病に対するCGRPの効能を研究しており、PTSDへの応用を着想した。

 厚生労働省によると、国内のPTSD患者は2014年が約3千人、17年は約7千人と推移。多発する自然災害や新型コロナウイルスの影響で、今後も増加が懸念される。治療には、情緒を安定させる神経伝達物質・セロトニンの働きを助ける薬が主に使われるが、効果は薄いという報告もある。

 橋川准教授は「CGRPの効果的な投与方法などを探り、新しい治療薬の実用化を目指したい」と話している。成果は3月、英オンライン科学誌に掲載された。

(2021年06月21日 更新)

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