ワクチン接種 客観的情報で判断を 川崎医科大・中野教授に聞く

ワクチン接種の意義を話す中野教授

 岡山市内では、新型コロナウイルスワクチンの高齢者への接種が順調に進み、5日からは64歳以下に拡大される。一方で、インターネット上では誤解や根拠のない情報が出回り、若年層を中心に接種への不安も広がっている。予防接種に詳しい川崎医科大の中野貴司教授は「感染症対策の基本は予防。ワクチンには分からないこともあるが、客観的な情報に目を向けてほしい」と呼び掛ける。

 ―ネット上では、ワクチン接種で「遺伝子が組み換えられる」「不妊になる」といった情報が飛び交っている。

 全く誤った情報だ。長期的な副反応などがまだ分からないのは確か。ただ、ワクチン接種などの対策を講じなければ、流行が再び拡大するのは明らか。ワクチンは世界中、誰にでも提供できる手段で、手術や高額な治療薬ほどコストもかからない。健康な体に予防のために注射するのは抵抗があるかもしれないが、みんなが一斉に免疫を持たなければ、早期収束は期待できない。

 ―副反応への心配の声もある。正しい情報をどう見分ければいいか。

 治験では、深刻な有害事象のリスクが上がるという報告はなく、高い有効性が示されている。インフルエンザなど他のワクチンに比べ、接種後の発熱や体のだるさ、接種部位の痛みといった症状が出る頻度は高いが、いずれも数日で治る。市販の解熱薬や鎮痛薬を飲んでも問題ない。

 ―情報をどこで入手できるのか。

 厚生労働省はホームページ(HP)で最新の情報を発信し、小児科学会、産婦人科学会などもHPで声明を発表している。県のコールセンターでも医学的な相談を受け付けている。客観的な情報の収集に努めてほしい。

 ―ワクチン接種の意義が広く理解されるか。

 個人を守るというだけでなく、社会全体の流行を制御するという視点も必要だろう。新型コロナはインフルエンザより重症化したり、亡くなったりする人が多く、流行すれば医療が逼迫(ひっぱく)する。大人も子どもも1年以上、我慢と不自由を強いられている。この感染症を抑え込むのに、自分にできることは何か。市民の皆さんがそれぞれの立場で考えてもらいたい。

 なかの・たかし 専門は小児科、感染症、予防接種、国際保健。2010年から現職。厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の会長代理も務める。

(2021年07月01日 更新)

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