小児ぜんそく マスク、消毒が悪化予防 岡山医療センター小児科 古城真秀子医長に聞く

古城真秀子氏

 ぜんそくは、気管支に炎症が起きて呼吸困難の発作を繰り返す病気だ。小児ではアレルギー体質が深く関与し、10人のうち1人程度に症状があると言われ、多くが乳幼児期に発症する。今夏は、昨年は見られなかったRSウイルス感染症が乳幼児を中心に流行し、ぜんそく発症のきっかけになりかねないと懸念されている。その一方で、マスク着用などの新型コロナウイルス感染症対策が、ぜんそくの悪化予防に有効―との研究も示された。岡山医療センター(岡山市北区田益)小児科医長の古城真秀子医師に、小児ぜんそくをめぐる現状を聞いた。

 ―小児ぜんそくとはどのような病気ですか。

 アレルギーの病気です。小中学生では10人に1人くらいと言われます。ご両親にアレルギー体質がある場合は注意が必要です。

 口や鼻からダニの死がいや花粉、ほこり、カビ、タバコの煙などアレルギー症状を起こす原因物質(アレルゲン)が入り込むことで、刺激を受けた気管支が収縮し、炎症を起こして腫れ、粘液(たん)も分泌して気管支の内部を狭くします。肺に空気が入りにくくなって酸素交換がうまくいかなくなるのです。

 せきが出たり、たんが絡んだり、呼吸をする時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がする喘鳴(ぜんめい)、息苦しさなどの症状が現れます。激しくせき込んで呼吸困難になる「発作」は、昼間よりも夜間、就寝中に現れやすくなります。

 ―生活上の注意点は。

 小さなお子さんだと気管支が狭く重症化しやすいので早期の医療介入に加え、アレルゲンの除去、かぜなどの感染症予防に努め、症状をコントロールすることが大切です。ぜんそく発作は、風邪をひいたときや冷たい空気を吸ったとき、部屋の掃除などをしてほこりが多い環境の中にいたとき、運動をしたときなどにも起こりやすくなります。今の季節は冷房のほこりやカビ、花火の煙が要注意です。秋に向けて、空気が冷たくなる季節の変わり目にも気を付けてください。

 発作を繰り返すと気管支はだんだん硬くなり、薬の効きは悪くなります。気管支が詰まると、そこから先には空気が運ばれず、酸素が取り込めなくなります。周囲の肺の細胞は徐々に壊れていきます。

 ―治療はどのように。

 治療薬には、気管支の状態を良くして発作が起きないようにする予防的な薬や、発作が起きたときに使う薬などがあります。ぜんそくの重症度は発作の頻度や日常生活への影響などで5段階に分かれます。各段階に応じてどういった薬をどのように使うのか、治療法はほぼ確立しています。早い段階で治療をすれば重症化は抑えられます。最近は小さな子どもさんが飲みやすいよう、甘い錠剤の飲み薬があります。朝まで効果が長続きする貼り薬もあり、早朝の大きな発作は防げるようになりました。

 ―東京大学の研究グループは昨年11月、新型コロナウイルス感染症流行の影響で、ぜんそく患者の入院が激減したと発表しました。

 マスク着用や手指消毒の徹底、外出自粛などの新型コロナ対策によって、発作のきっかけとなるインフルエンザなどの感染症にかかりにくくなったことが、ぜんそくの悪化を防いだようです。患者の感染予防行動の変化や、地域レベルの感染予防対策が、ぜんそく患者にとっては症状コントロールの改善につながったと言えるでしょう。少なくとも大きな発作は防げているので、今後も同様の対策を継続することが重要になってくると思います。

 ふるじょう・まほこ 浜松医科大学卒業。旧国立岡山病院に研修医として入り、1997年に岡山医療センター小児科常勤医、2018年から小児科医長。先天性代謝異常、小児内分泌、小児糖尿病・肥満が専門。女子高校生の体の悩みも受け付ける。日本先天代謝異常学会、日本小児内分泌学会などに所属。ムコ多糖症親の会幹事。

RSウイルス 岡山県内で流行 ぜんそく移行リスクも

 RSウイルス感染症が乳幼児を中心に流行している。岡山県内の54医療機関での定点調査によると、ピークだった7月中旬に比べ患者数は減少してはいるものの、依然高い水準で感染は広がっている。古城真秀子医師は「RSウイルス感染症に罹患(りかん)することによって、炎症を起こした細気管支が過敏になり、ぜんそくに移行しやすくなる」と注意を呼び掛けている。

 RSウイルスは発熱や鼻水、せきなどが主な症状。感染者のくしゃみやせきなどの飛沫(ひまつ)、直接的な接触、物を介しての間接的な接触によって感染する。2歳までにほぼ全員が感染し、繰り返しかかるが、多くは風邪のような軽症で終わる。ただ、1歳に満たない乳児や、呼吸器や心臓に障害がある場合は肺炎などの重症化リスクがある。

 昨年は流行しなかったが、今年は5月に入って患者が増え始めた。ほとんどが2歳児以下。その背景について古城医師は、昨年は新型コロナウイルスのため保育園などの休園が多く、集団感染の機会が減ったことを指摘。「その結果、免疫を持たない子どもたちが増え、保育園に通うようになって感染が一挙に広がったのではないか」と説明している。感染力が強く、確実な治療薬もないため対策は難しいが、「人混みを避けたりマスク着用、手洗い徹底が必要」と話している。

(2021年08月18日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

カテゴリー

関連病院

PAGE TOP