医療従事者24% 燃え尽き症候群 倉敷中央病院医長ら初の全国調査

防護具を身に着け、感染者が入院するレッドゾーンに入る医師。感染拡大で医療従事者の負担は増している=10日、倉敷中央病院救命救急センター(同病院提供)

 症状が最も重い新型コロナウイルス感染者を診る「3次救急」に指定されている全国15の医療機関で、治療に当たる医療従事者の4人に1人が、自分がバーンアウト(燃え尽き症候群)の状態だと感じていることが、倉敷中央病院救命救急センター(倉敷市美和)の栗山明医長らの調査で分かった。現在は調査した3月時点より感染は拡大しており、「医療現場はより深刻な状況に追い込まれている」と指摘する。

 栗山医長によると、全国規模の調査は初めてで、医療従事者の心身の状態を把握しようと、インターネットを通じて実施。岡山をはじめ、東京や大阪、広島、沖縄といった15都道府県でコロナ対応に当たる医師、看護師、放射線技師ら867人から回答を得た。

 自らバーンアウトと認識しているのは24%で、「仕事上のストレスを考えることが多い」「何かしらの助けが必要な状態にある」と感じていた。職種別では放射線技師が29%と最も多く、看護師(28%)、臨床工学技士(19%)と続いた。

 コロナ禍に対する不安については「家族を感染させてしまう」が84%と最も多く、「同僚にうつしてしまう」も70%だった。また、面会制限により患者が家族と面会できないことについては、「抵抗を感じる」「感情的につらい」と回答した人がそれぞれ7割に上った。

 さらに深刻な状況として、「集中治療の業務から離れたい、やめたい」と思っている人は全体の4割を突破。実際に調査に協力した医療機関ではスタッフが心身ともに疲れ、退職したケースもあるという。

 バーンアウトは過重な負担などから、燃え尽きたように急に意欲を失い、仕事の継続が危ぶまれる状態を指す。医療従事者の場合は長時間勤務や患者とのやりとりからくる蓄積された疲れ、成果の見えない状況などが引き金になるとされる。

 栗山医長は「感染スピードが上昇し、もはや医療従事者の努力だけでは乗り越えられない状況になっている。国民一人一人が危機感を共有し、感染防止の徹底を図ることがこれまで以上に重要だ」と話している。

職場の支援必要


 医療従事者のバーンアウトに詳しい同志社大の久保真人教授(組織心理学)の話 過酷な職場環境の中、医療従事者を支えているのはプロフェッショナルとしての高い使命感とやりがいだ。だが、先が見通せないコロナ禍では常に慢性的なストレスにさらされており、職場のサポートが欠かせない。緊張を強いられるコロナ病棟だけの勤務ではなく、通常業務も並行して担えるような人員配置も必要だろう。

(2021年08月23日 更新)

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