iPS細胞を分化 大量培養に成功 岡山大院・宝田教授ら 実用化期待

宝田剛志教授

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の宝田剛志教授(幹細胞生物学)らのグループは、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を、四肢の発生過程で一時的に出現する「肢芽間葉系細胞(LBM)」に分化させ、大量培養することに成功した。事故での損傷や加齢による関節の痛みに苦しむ患者に、LBMから作った軟骨を移植する再生医療の実用化につながる可能性があるという。

 グループは、ほぼ全ての細胞に分化するiPS細胞がLBMになる一歩手前で、手足や心臓の細胞になる「側板中胚葉」に着目。側板中胚葉に、特殊な化合物を加えると、ほぼ全てがLBMになることを突き止めた。

 LBMを効率的に増殖させる専用の培養液も4種類の化合物やタンパク質を組み合わせて開発。10週間で1千万倍に増やすことができるという。今後、大型の動物で効果や安全性を確かめ、10年以内に臨床試験に着手することを目指す。

 骨の成長に異常がある遺伝性疾患の患者から作り出したiPS細胞をLBMにし、四肢の形成過程を観察する研究も実施。発症メカニズムの解明や新たな治療法の確立に役立てる。宝田教授は「高齢者やアスリート、生まれつき背が低いといった病気に悩む人の希望となれるよう力を尽くす」と話している。

 成果は8月中旬、英科学誌ネイチャーの関連医学誌に掲載された。

(2021年09月04日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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