(8)多様化する在宅医療サービス 倉敷スイートホスピタル外来科長 浦川麻衣子

浦川麻衣子氏

 在宅医療とは通院が困難になったとき、かかりつけ医や多職種の訪問により診療や治療、処置、ケアなどを受け、住み慣れた自宅や環境で病気の療養を行うことです。

 わが国は「超高齢社会」に突入し、2042年に高齢者人口のピークを迎えます。今後、高齢者の増加により医療提供体制が変化すること、また、入院よりも外来通院をしながら自宅や施設での療養生活を選択することも考えられます。さらに、ご本人やご家族の都合などで通院が困難となり病院への受診ができない方も増えてくると考えられます。

 今後は地域で「在宅医療システム」を構築し、患者さまが住み慣れた環境で医療を受けることができる体制が必要となります。

 岡山県は在宅医療サービスを提供している医療機関が多くあります。特に内科系の診療科による自宅や施設への訪問診療(定期訪問)や往診を実施している医療機関は多く、患者さまが自宅や施設で安心して過ごせるよう管理が行われています。

 一方で、自宅や施設で過ごされる患者さまは時に湿疹、褥瘡(じょくそう)、爪白癬(つめはくせん)などの皮膚疾患でお困りの方も少なくありません。治療するためには専門的診療科への受診が必要ですが、外来通院が困難な患者さまは内科系以外の在宅医療を受けづらい状況もあります。

 このような背景から、内科以外の専門的診療科を在宅医療にも提供することも、これからの地域住民をサポートする役割の一つと考えます。

 当院は強化型在宅療養支援病院として、在宅医療を提供していましたが、2020年秋ごろより専門科に特化した在宅医療も開始致しました。初めに形成外科の往診を開始すると、施設や居宅より爪切りや褥瘡処置などの依頼がありました。実際に往診に行かせていただくと足の爪では爪白癬や、爪が肥厚し靴下や靴を履くことが困難な患者さまがおられました=写真。

 また褥瘡処置では、病院から退院後、専門的な治療が継続されておらず創部の状態が悪化している事例もありました。専門医が訪問診療を行うことにより必要な治療・ケアを施すことができ、症状の改善や悪化を防ぎ、褥瘡などは施設、居宅であっても治癒に至っています。

 現在では形成外科に加え、内科、皮膚科、整形外科、泌尿器科の五つの診療科の訪問診療を行っています。ご自宅や施設からの相談が増加しており、専門に特化した在宅医療のニーズを実感しております。

 今回のテーマであります「尊厳の保障」の実現に向けて、本人が住み慣れた地域で安心してその人らしく生活を継続していただくためには、医療機関はさまざまなニーズに応じた在宅医療サービスを提供し、地域住民をはじめ、行政や関係機関と連携を図ることが重要です。当院も引き続き地域医療を支えるべく積極的に取り組み、お一人おひとりの尊厳を保障していく所存でございます。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 うらかわ・まいこ 2001年に倉敷広済病院入職後、倉敷看護専門学校第二看護学科にて看護師免許取得。倉敷広済病院を経て12年より倉敷スイートホスピタル勤務。18年7月より現職。

(2021年10月04日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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