(8)地域とともに歩む専門科を目指して~脳神経内科~ 岡山旭東病院脳神経内科部長 北山通朗

北山通朗氏

 「脳神経内科」は、「脳・神経の病気を内科的専門知識と技術をもって診療する診療科」ですが、実際何を診る専門科なのかわかりにくく、「心療内科」「精神神経科」等と混同されることもしばしばです。

 脳神経内科で診療する主な病気は、「脳卒中」「認知症」「頭痛」「パーキンソン病」などよく聞く病気から、「感染症」「代謝性異常」に伴う神経障害、はたまた「内科疾患に伴う神経系障害」と非常に幅広く多岐に渡ります=表1

 そのため、専門医は「脳・神経」だけをみるわけではなく、(内科的に)全身を診ることから始まります。主な症状=表2=は、脳・神経系の病気以外でもよく自覚する症状です。つまり、自覚した症状の全てが脳・神経の病気ではないけれど、可能性は否定できないといえます。「何かおかしいな?」と思ったら脳神経内科を受診してみてはいかがでしょうか。

 診断にはさまざまな病気の鑑別が重要で、血液検査やMRI、RI検査、電気生理学的検査、脳波、神経心理検査など他の診療科よりさまざまな検査を行うことがあります。当院ではほぼ全ての検査が当日可能ですが、一番大切なのは問診です。十分な問診は疾患の鑑別となり、不必要な検査が減り、早期診断につながります。

 問診のポイント=表3=を診察当日に全て伝えることはできないため、あらかじめメモを作成して受診しましょう。当院ではAI問診(WEBで事前入力可能)を活用すればスムーズな情報共有・診療につながります。

 当科は、常勤医4人、非常勤医3人(すべて日本神経学会専門医)により外来・入院診療を行っています。2020年度は新型コロナ感染症の影響はありましたが、外来患者数2万人以上(うち新患患者3千500人以上)、入院患者約800人と、岡山県下では1、2を争う実績があります。外来は主に、頭痛、めまい、パーキンソン病、神経免疫疾患、認知症などを中心に診療しています。

 主な検査は当日施行が可能で、迅速・正確な診断・治療を心掛けています。入院では、脳血管障害やてんかんなどの機能性疾患、神経免疫疾患などの急性期治療を要する疾患だけではなく、パーキンソン病など慢性期神経変性疾患の薬剤調整、リハビリテーション、療養調整も行っています。本年から、パーキンソン病患者に対するリハビリテーション入院も始めました。

 昨今、病院の機能分化、専門科の細分化が進み、どの病院のどの科にいけばよいのか分かりにくくなっています。高齢化も加速し、総合的+専門性を兼ね備えた脳神経内科医に対する需要は年々高まっています。

 当科は急性期から終末期医療まで幅広く多くの患者さんを診療しており、他病院にない特徴と言えます。今後さらに社会が多様化する中、地域で何が必要とされ、何ができるのかを常に考え、地域に寄り添える診療科としてさらに貢献できればと思っています。

 「これは脳かな」と思ったら、「No」と思わず、脳神経内科の受診をしてみてください。

     ◇

 岡山旭東病院(086―276―3231)。連載は今回で終わりです。

 きたやま・みちお 鳥取大学医学部卒。鳥取大学脳神経内科助教を経て2013年4月より、岡山旭東病院勤務、20年1月より現職。日本神経学会専門医・指導医。日本認知症学会専門医・指導医。日本臨床倫理学会認定臨床倫理認定士(臨床倫理アドバイザー)。

(2021年11月04日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

関連病院

PAGE TOP