(5)少子化時代の地域小児医療を守る 国立病院機構岡山医療センター小児科医長 清水順也

清水順也氏

 岡山医療センター小児科の歴史は古く、前身である国立岡山病院以来、地域の小児医療をリードする一翼を担ってきました。

 現在小児科は13人の小児科医師(小児科専門医7人、新生児科含まず)、看護師(小児救急看護認定看護師1人)、保育士、医療クラークにより構成され、新生児科、小児外科等の関係他科と共に小児の診療を行っています。

 ■小児救急医療を守る

 地域の救急医療中核病院の小児科として、けいれん、喘息(ぜんそく)発作、アナフィラキシー、たばこや薬物誤飲などの頻度の高い急性疾患から、脳炎脳症など緊急性や重症度の高い疾患まで、また、虐待が疑われるケース、慢性疾患児や在宅医療を受けているなどリスクの高い患者さんも含めて、24時間・365日体制で救急対応を行っています。

 今回のコロナ禍においては、岡山県の要請を受け、特に入院医療を要するCOVID―19小児患者を県内でも優先的に受け入れてきました。救急や専門医療などの一般診療にできるだけ支障を来さない体制維持を目指して、病院を挙げての感染対策を行っています。

 ■専門医療を攻める

 従来の当院小児科の柱として、各専門領域の充実があり、いくつかを紹介します。

 「内分泌」「代謝」分野では、ホルモン補充療法や酵素補充療法に積極的に取り組み、多くの患者さんの予後改善を得ています。

 「腎臓」分野では、岡山県の学校検尿における専門医療機関として腎生検による確定診断と治療を行っています。また、小児の急性および慢性腎不全の診療を行っている数少ない施設です。

 「アレルギー」分野では、食物経口負荷試験による確実な診断を行い、耐性獲得を目指しています。

 「神経」分野では、2020年から正式な院外標榜(ひょうぼう)科として「小児神経内科」がスタートし、主にけいれん性疾患、中枢神経感染症(脳炎・脳症、髄膜炎)や脳性麻痺(まひ)、発達の遅れなどがあるお子さんの診療にチームで取り組んでいます。

 最先端のバイオテクノロジー技術によって生み出された生物学的製剤を、小児領域においていち早く導入しています。難治ネフローゼ症候群、川崎病、炎症性腸疾患、リウマチ性疾患、難治気管支喘息など多岐にわたる疾患において、大きな治療効果を得ています。

 21年4月には、小児血液・がん学会専門医の金光医師が着任しました。小児の白血病やがんは治せる時代から後遺症無き治癒を目指す段階になっています。岡山大学病院小児科との連携をさらに強化し、小児の血液疾患やがんの診療体制拡大の準備を進めています。

 ■おわりに

 小児科の守備範囲は、新生児科や外科系疾患を除いたとしても多岐にわたります=グラフ。当院小児科では、スタッフ全員が専門にかかわらず子どもの総合診療医として子どもたちと向き合っています。

     ◇

 国立病院機構岡山医療センター(086―294―9911)

 しみず・じゅんや 愛媛県立大洲高校、岡山大学医学部卒。松山赤十字病院、岡山大学病院などを経て2003年より岡山医療センター勤務、17年より小児科医長。日本小児科学会専門医・指導医、日本腎臓学会専門医・指導医。岡山大学医学部臨床教授、医学博士。

(2021年11月18日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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