(2)尿漏れが気になったら、泌尿器科検診を!Part2 岡山中央病院泌尿器科医師 大岩裕子

 尿失禁とは、自分の意志とは関係なく尿が漏れてしまうことで、前回は新しい治療法が保険適応になった切迫性尿失禁についてご説明させていただきました。

 第2回の今回は、(2)手術で治せる可能性のある腹圧性尿失禁、(3)緊急性の高い溢流(いつりゅう)性尿失禁の二つについて説明したいと思います。

 ■腹圧性尿失禁 =手術で治せる可能性も

 腹圧性尿失禁は、尿道のしまりが悪く、せき、くしゃみ、スポーツなどおなかに圧がかかった時に尿が漏れてしまう「尿漏れ」です。この尿漏れは、約4センチと尿道が短く、分娩(ぶんべん)などで尿道をしめる尿道括約筋を含む骨盤底筋にダメージがきやすい女性に多いタイプです。前述の切迫性尿失禁と合併されている方もおられ、そのようなケースは混合性尿失禁とよびます。

 腹圧性尿失禁が疑われる場合は、診断のため、一般的な泌尿器検査以外に膣(ちつ)の中を診る内診や、咳(せき)などで実際に尿が漏れるかをみるストレステスト、膀胱(ぼうこう)と尿道の形を詳しく評価できる鎖膀胱造影検査などを行います。腹圧性尿失禁と診断された場合、内服治療または手術療法を行います。当院では手術療法としてTVT手術(尿失禁根治術)を行っております。

 TVT手術とは、尿道にテープをかけて吊り上げ、ハンモックのように尿道を支えることで腹圧による尿失禁を改善する治療法です。約1時間程度で終わる手術で、下半身麻酔で行い、約4日の入院となります。傷は、膣の中に約1・5センチが1カ所、下腹部に1センチ弱の傷が2カ所できます。

 ■溢流性尿失禁 =知らない間に体に悪影響を 及ぼしている可能性も

 溢流性尿失禁は、排尿しても尿を出し切れず、膀胱に尿が多量に残っている(残尿過多)ため、尿があふれて漏れることによって起こる「尿漏れ」です。溢流性尿失禁が怖い理由は、二つあります。

 一つは膀胱に古い尿が溜まっているため尿路感染症になりやすく、腎盂(じんう)腎炎などを合併しやすいことです。

 もう一つは、なんとか排尿しようと膀胱が力み、膀胱内圧があがることで尿が腎臓に逆流してしまい腎機能障害を引き起こす危険性があるということです。数年前から、尿の出しにくさや頻尿があったけれど、最近は尿意関係なく尿漏れしだした、などという場合はこの溢流性尿失禁を疑います。

 この怖い「尿漏れ」であるかどうかは、排尿後に残尿がどのくらいあるかを調べることで診断しますが、泌尿器科を受診して排尿後にお腹(なか)に機械を当てるだけでできます。残尿が多く、体に悪影響が及ぼしていれば、内服治療やカテーテル療法、手術療法など複合的に対処していきます。

 尿漏れに悩みながらも、歳のせいだろうという気持ちや、恥ずかしさから泌尿器科を受診することに二の足を踏んでしまう方は多いと思います。確かに尿漏れに対する加齢の影響は多大にありますが、すこしでも尿漏れに悩まされない老後を過ごしていただけたらと思い日々診療しておりますので、お気軽にリラックスした気持ちで受診いただければと思います。

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 岡山中央病院(086―252―3221)

 おおいわ・ゆうこ 山口大学医学部卒業。岡山大学医学部附属病院泌尿器科入局。岡山医療センター後期レジデント、岡山大学病院泌尿器科医員を経て2021年から岡山中央病院。日本泌尿器科学会専門医、がん治療認定医、泌尿器腹腔鏡技術認定医。医学博士。

(2021年12月06日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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