網膜の難病 色素静脈注射が効果大 岡山大院・松尾教授ら実験で確認

松尾俊彦教授

 網膜の視細胞が徐々に失われる難病「網膜色素変性症」を研究する岡山大のグループは、症状の進行を遅らせる光電変換色素の投与方法について、静脈注射すると、経口や点眼よりも大幅に効果が高くなることを、ラット実験で確認した。

 同大大学院ヘルスシステム統合科学研究科の松尾俊彦教授(眼科)らのグループで、色素はバイオ企業・林原(岡山市)の「NK―5962」。眼球内の硝子体に注射すると、視細胞の死滅を防ぐ効果があることは既に判明しており、安全かつ効果的な投与方法を探っていた。

 松尾教授らはラット10匹を3群に分け、生理食塩水に溶かした同色素を「経口」「点眼」「尾の静脈への注射」の方法で投与。同色素の眼球内への移行量を、溶液の濃度表示法の一つ「モル濃度」で測定した。静脈注射は3~29ナノ(10億分の1)で、経口0・4ナノ、点眼0・9ナノの約3~72倍だった。

 網膜色素変性症は視野が狭まり、視力が低下する遺伝性の疾患で治療法は確立されていない。松尾教授らは2012年、同色素などからなる人工網膜を開発。臨床試験に向けて準備を進めるとともに、症状の進行を遅らせる薬作りにも取り組んでいる。

 松尾教授は「静脈注射は効果が高いが、体への負担が大きい。腸での吸収を高める方法を探るなどし、経口薬または点眼薬での実用化を探りたい」と話している。

 研究成果は6月、スイスの科学誌に掲載された。

(2021年12月22日 更新)

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