(3)検診結果放置していませんか? 岡山西大寺病院内科医長 池田示真子

池田示真子氏

 健康診断で異常値を指摘されても、少々なら気にしなくていいと思っている方、いらっしゃいませんか? 軽度の脂質異常症、脂肪肝、食後高血糖などいわゆる生活習慣病は、漢方医で内科医の私にとってまさに未病(健康と病気の間)であり、その段階で改善してこそ健康寿命を延ばし医療費の削減にもつながると考えています。

■脂肪肝

 脂肪肝ときくと、脂肪の取り過ぎが原因であると勘違いされる方が多いですが、実は炭水化物や糖質(ご飯、パン、麺類、果物など)のとり過ぎで余ったものが脂肪として肝臓に蓄えられた状態です。脂肪肝、肝硬変、肝臓がんへと進行することが分かっており、日本の中で約300万人の脂肪肝のうち、3万人以上が肝細胞がんになる可能性があると言われています。

■食後高血糖

 ダイエットと称して食事を抜くことの弊害をご存じでしょうか。検診で血糖値正常といわれた方でも、食事を抜くと次の食後血糖値の激増(血糖値スパイク)がおこり=図1、その高血糖の状態がインスリンの過剰分泌を促すことで血管を傷つけます。やがて心筋梗塞、狭心症、脳梗塞の死亡リスクや認知症のリスクが食後の血糖値の高さに比例して高まるということがわかっています。

■自分を知る

 まずは病院を受診しましょう。血液検査値異常を指摘されてもよくわからないといわれた方が、CTで内臓脂肪の量、腹部エコーで白色化した肝臓の色、血圧脈波検査で血管年齢、頸動脈(けいどうみゃく)エコーでプラークの沈着を目の当たりにしたとき=図2、「どうすればいいのでしょう?」と、やっとその気になってくださいます。

 また、血糖値スパイクが起きやすい方かどうかは、病院で75グラムOGTTという検査を受けるとはっきりとわかります。

■管理栄養士が指導

 多種多様な生活パターンがある現代、医師が外来診察時にすべてを把握して個人指導するのは不可能です。そこで管理栄養士が、食事内容、睡眠パターン、飲酒量、運動量などを事細かく聴取して適した指導を行ってくれます。また食事療法だけでは不十分で、その方に適した運動療法を同時に行うことも大切です。検診結果異常を指摘されたことを、投薬開始前に生活習慣の間違いに気がつく「チャンスを得た」と考えて、ともに頑張りませんか。

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 岡山西大寺病院(086―943―2211)

 いけだ・しまこ 東京女子医科大学卒業。岡山大学病院消化器内科、倉敷中央病院、岡山市立せのお病院、西大寺中央病院を経て2019年9月より現職。漢方は湯原淳良先生に師事。日本東洋医学学会漢方専門医、日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、インフェクションコントロールドクター。

(2022年01月17日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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