(4)withコロナ時代の消化器内視鏡診療 津山中央病院副院長兼内視鏡センター長 竹中龍太

竹中龍太氏

 ■新型コロナウイルス感染症の影響

 津山中央病院では消化器内視鏡を使用した最新の診断治療法を積極的に取り入れ、地域の皆さまに提供してきました。

 1999年12月に津山中央病院が津山市川崎に移転して以来、内視鏡件数は年々増加傾向で、2009年に初めて年間1万件を突破、その後も増加し、19年までは年間1万2千件前後と岡山県下有数の検査数を行っていました。しかしながら20年は検査数が1万243件と2割近くも減少することになりました。

 理由は明白で、新型コロナウイルス感染症の影響によるものでした。新型コロナウイルス感染症がクルーズ船ダイヤモンドプリンセス号内で集団発生し、その後国内でも急速に感染拡大したことを受け、20年4月に日本消化器内視鏡学会から不急の検査は延期する趣旨の提言がなされました。

 当院では無症状で定期的に内視鏡検査を受けている患者さんには連絡をとり、半年間程度検査を延期する対応をとりました。検診で行う内視鏡は中止とし、その結果20年5月の胃カメラ件数は通常の3割程度に減少しました。その後日本消化器内視鏡学会から感染対策をとった上で内視鏡検査を行うことの重要性が示され、徐々に検査数は回復したものの通常状態になるまでには数カ月以上の期間を要しました=グラフ

 ■内視鏡検診延期による弊害

 公益財団法人日本対がん協会とがん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)の全国調査によると、20年に診断された胃がん、大腸がんの患者さんは19年に比較してそれぞれ13・4%、10・2%減少していました。

 これは新型コロナウイルスの感染拡大によりがん検診をはじめ、各種検診が一時中断されたことに加え、受診控えや通院控え、県境をまたぐ移動の自粛などで検診受診者、通院者が減ったことが原因とされています。おおむね早期のがんが減る一方、進行期のがんは差が少ない傾向となり、今後、進行がんの発見が増えることが心配されます。

 ■安全安心な内視鏡診療にむけた当院での取り組み

 当院では内視鏡検査受診者全員を対象に検査前に症状、行動歴に関して問診を行っています。無症状あるいは臨床的に新型コロナウイルス感染を疑う項目がない場合にはローリスクとし、標準的な感染防護策を講じて内視鏡を行います。

 標準的な防護策とはフェイスシールド(またはゴーグル)、サージカルマスク、手袋、長袖ガウンを指します。一方、問診で新型コロナウイルス感染を疑う項目がある、あるいは新型コロナウイルス感染が確定している時には緊急性が高い場合のみハイリスクとしてサージカルマスクをN95マスクに変更し、患者さんをフィルター内に収容して行います=写真。ハイリスクで緊急性が低い場合には内視鏡検査を延期する措置をとります。

 内視鏡の洗浄は日本消化器内視鏡学会のガイドラインに沿って行い、周辺機器は検査ごとにアルコールで清拭します。もちろん内視鏡診療に関わるスタッフについても検温等健康チェックを毎日行い、医療従事者が感染源とならないよう努めています。

 ■おわりに

 内視鏡検査延期によりがん発見の遅れが懸念されるため、十分な対策のもとで内視鏡診療は継続するべきと考えています。新型コロナウイルス感染症が心配で検診や定期検査を控えている方はぜひとも内視鏡検査を受けることをお勧めします。津山中央病院では十分な感染対策を講じることで地域の患者さんや検診受診者が安心して内視鏡診療を受けることができる環境を今後も整えていきます。

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 津山中央病院(0868ー21ー8111)

 たけなか・りゅうた 岡山大学医学部卒。岡山大学医学部第一内科(現消化器・肝臓内科)、国立がんセンター中央病院などを経て2009年から津山中央病院勤務。日本内科学会指導医・認定医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医・学術評議員、日本消化器病学会指導医・専門医・学会評議員、米国消化器内視鏡学会会員。

(2022年01月17日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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