(2)今や国民病の慢性腎臓病(CKD) 笠岡第一病院内科部長 原田和博

原田和博氏

 「CKD」とは慢性腎臓病(chronic kidney disease)のことですが、現在1千万人以上の患者さんがおられ新たな国民病といわれています。

 CKDがあると、心臓の病気(心不全や心筋梗塞など)や脳血管障害(脳梗塞や脳出血)を発症しやすくなることと、進行して末期腎不全になると透析治療や腎移植が必要になることにより、CKDの啓蒙と対策の強化が急務になっています。

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 腎臓はそら豆の形をした握りこぶし大の臓器で腰の上部に左右二つあります。腎臓には糸球体(細い血管の塊からなるろ過装置)が約100万個あり、血液をろ過して老廃物や余分な塩分を尿として排出します=

 腎臓の機能は、血清クレアチニン値と年齢、性別から計算される推算糸球体ろ過量(eGFR)で示されます。また尿所見も腎臓の状態を示す重要な情報で、とくにタンパク尿は糸球体の障害を示す所見です。eGFR値が60未満あるいはタンパク尿が3カ月以上続くときにCKDと診断されます。

 主な原因として糖尿病、腎硬化症(高血圧や動脈硬化が関与)、糸球体腎炎(免疫異常による糸球体の炎症)が、また遺伝性疾患として多発性嚢胞(のうほう)腎などがあります。

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 CKDは早期に適切に治療すれば悪化を防ぎ、改善することも十分期待できます。治療は、血糖、血圧、脂質などの管理や塩分摂取制限などが基本ですが、近年、薬物療法は著明に進歩しています。

 腎不全の症状(むくみ、倦怠(けんたい)感、息切れなど)は、CKDがかなり進行してから現れるので、検診結果や受診時の血液・尿検査が重要です。

 よりよい診療を目指して、かかりつけ医と専門医療機関が共同で治療、管理していく病診連携システムが構築されてきています。井笠地域では「井笠エリアCKDネット」と称し、かかりつけ医と当院が連携して、必要な検査、治療の検討、栄養士や看護師による食事や生活の指導を行っています。

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 CKDが悪化して末期腎不全に至ると回復の可能性はなく、透析や腎臓移植が必要になります。

 透析療法には血液を透析器に通しきれいにして戻す「血液透析」と、おなかに管をいれ透析液を出し入れする「腹膜透析」があります。

 透析患者さんは日本に約35万人おられ、その数はまだ増加しています。当院では約180人の方が日常生活の維持を目指しながら血液透析(週3回、1回4時間)を受けておられます。

 透析治療導入時の年齢は平均70歳で、原疾患は糖尿病が約半数を占めますが、末期腎不全に至った患者さんは、診断・治療の遅れや受診の中断が多くみられます。とにかく早期診断、早期治療が極めて重要です。

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 笠岡第一病院(0865―67―0211)

 はらだ・かずひろ 自治医科大学卒業。岡山赤十字病院、町立成羽病院、町立大原病院、自治医科大学臨床薬理学(講師)を経て2000年より現職。11年に透析統括部長兼務。日本臨床薬理学会専門医・指導医、日本循環器学会専門医。

(2022年01月17日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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