(5)胃がん外科治療にロボット手術を導入 津山中央病院外科部長 西崎正彦

サージョンコンソールに座り、遠隔操作でロボットをコントロールする執刀医=津山中央病院

ダヴィンチシステムを使って行われた胃がんの手術=津山中央病院

西崎正彦氏

 現在消化器がんに対する最先端外科治療は米国Intuitive社が開発したダヴィンチシステムによるロボット手術です。

 ロボット手術と聞くとロボットが自動で手術をすると思われるかもしれませんが、実際には執刀医がサージョンコンソールという操縦席に座り、遠隔操作でロボットをコントロールして手術を行っています。

 具体的には体に小さな傷を5カ所作り、そこにカメラや鉗子(かんし=手術を実際に行う道具)を出し入れするポートという細い筒を差し込みます。そのポートとカメラ・鉗子をロボットアームとドッキングさせ手術を行います。操縦する執刀医の他に2人の外科医が患者側で手術のサポートをします。

 当院では2019年にロボット手術に対応した新手術室を造営後、泌尿器科・呼吸器外科分野ですでにダヴィンチシステムによるロボット手術を導入しており、特に前立腺がんの治療は数多く行われています。

 消化器外科分野でも10年前より傷が小さく体に負担の少ない低侵襲治療として腹腔鏡下(ふくくうきょうか)胃切除術を本格的に導入し、外科一同研さんを積んできました。その発展型としてのロボット支援下胃切除術には多くのメリットがあり、また、2018年に保険収載されたことで導入に向け準備を行い、昨年末胃がんに対するロボット手術を開始しました。

 ロボット手術のメリットとしては3Dカメラでリアルな立体画像の拡大視野、多関節機能をもつ鉗子、手振れ防止機構などにより腹腔鏡手術で難易度の高い部位でも安全で精密な手術操作を行うことができ、出血量も少ない点が挙げられます。

 特に胃がんの場合は開腹手術・腹腔鏡手術では胃の背側にある膵臓(すいぞう)を押さえたりリンパ節を切除する際に傷付けたりすることが原因で膵液瘻(すいえきろう=タンパク質を溶かしてしまう膵液がおなかの中に漏れ出て炎症を起こすこと)という合併症が問題になっていましたが、ロボット手術ではこの合併症の頻度が少なくなることが証明されています。その他執刀医のストレスが少なく、没入感が強いことで、より集中した確実な手術が可能とされています。

 また、ロボット手術はチーム医療として機能しています。ロボット手術の導入前には外科医・手術室看護師・臨床工学士でチームとして他施設への見学、入念なシミュレーションを行い、手術中もチームとして連携しながらロボット手術を安全に行っています。今後は直腸がん治療にもロボット手術を導入する予定で、地域を支える一環として消化器外科領域でも最先端の高度医療を十分に提供していきます。

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 津山中央病院(0868―21―8111)

 にしざき・まさひこ 岡山大学卒、岡山大学大学院博士課程修了。広島市立広島市民病院、岡山大学病院を経て2021年より津山中央病院に勤務。医学博士。外科専門医・指導医、消化器外科専門医・指導医、内視鏡外科技術認定医、ダヴィンチコンソールサージョン。岡山大学臨床教授。

(2022年02月07日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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