(7)多部門と連携して行う外傷診療 津山中央病院整形外科医長・外傷センター副センター長 吉村将秀

吉村将秀氏

 近年、自動車自体の安全性が向上し、また運転手の安全運転意識も改善されたことなどから、交通事故死亡例は減少傾向にはあります。しかし、骨盤骨折=図1=や開放骨折などの重度の損傷を伴う外傷の多くは、依然として交通事故によるものが多いことに変わりはありません。

 岡山県北地域では特に、安全性が高いとは言い難い軽トラックが関係した事故が少なくありません。その結果として、重度の損傷を負うことが避けられません。農作業あるいは林業による外傷や、動物(牛や鹿、猪など)による外傷、機械に巻き込まれた外傷、なども多いのが県北地域の特徴とも言えます。

 また、救急車の台数も限られるため、緊急性の高い患者様は、ドクターヘリで搬送されたり、救急ドクターカーが出動したりすることもあります。全身的に重度の損傷を負う場合もあれば、損傷自体は部分的になっても、その部位に限れば重傷である場合もあります=図2

 全身的に重度の損傷を伴う場合には、整形外科単独での診療は困難であり、救命救急科はもちろんのこと、麻酔科や外科、脳神経外科とも連携を図りながら、治療を進めていきます。もちろん緊急手術が必要となることも多く、手術室の協力なしでは治療にあたることは困難です。

 患者様の回復のために必要な治療を提供するため、限られた時間の中で治療方針を判断する必要があり、来院時に可能な限り検査(単純レントゲンやCT、あるいはMRI)を行っています。その時点での患者様の全身状態、血液検査、体力などを考慮して、緊急手術における治療内容およびその後の段階的な治療計画を練る必要があり、場合によっては一度の入院で4、5回手術を受けられた方もおられます。

 そして、手術が終わればゴールかというと、そうではなく手術後には数週間から数カ月に及ぶリハビリテーションが必要です。ここでは、理学療法士や作業療法士が中心となり、患者様の機能回復に向けたサポートを行い、可能な限り元の生活に戻れるよう努めています。

 一人一人の外傷患者様によって、損傷形態や程度はさまざまで、それぞれの患者様が最適な治療を受けられるよう、多くの医療スタッフが一つになり、診療にあたっています。われわれは、岡山県北地域の患者様が負われた外傷は、なるべく当院で治療を受けていただき、なるべく元の生活に戻れればと考えており、今後も全力で治療を行ってまいります。

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 津山中央病院(0868―21―8111)

 よしむら・まさひで 岡山大学医学部卒。同医学部整形外科、福山市民病院、岡山市立市民病院などを経て、2018年より津山中央病院勤務。20年より現職。日本整形外科学会専門医。

(2022年03月07日 更新)

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