高齢者 コロナ禍乗り切るポイント 川崎医福大・石本准教授に聞く

「健康維持への意識を持って生活することが大切」と話す石本准教授

 新型コロナウイルスの感染が岡山県内で確認されて、22日で2年になる。マスク、黙食といった感染防止対策が浸透し、この1年ではワクチンの接種も進んだが、収束はまだ見通せていない。若いころに比べてどうしても心身の機能の衰えが否めないシニア世代は、コロナ禍をどう乗り切ればいいのか。高齢者の健康維持に詳しい川崎医療福祉大医療技術学部健康体育学科の石本恭子准教授に聞いた。

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 「この2年、社会活動が制限されたことで、高齢者も心身に大きな影響を受けたことは事実。(心身機能が低下する)フレイルの進行が心配される」。石本准教授は指摘する。

 感染予防のための自粛生活が長引くと、体を動かさなくなって体力・筋力が落ちる。体力が落ちるとますます外出がおっくうになり、さらなる筋力低下を招くという。影響は栄養状態にも波及する。活動量が減るとおなかがすかないため、食事の量が減り、低栄養や口周りの機能の衰えも懸念される。「体力の低下がさらに衰えを招く負のスパイラルに陥る恐れがある。断ち切るためにも、意識的に運動や食事のセルフケアに取り組む必要がある」

 自粛生活で社会的なつながりや人とのコミュニケーションが減ると、認知機能の低下も心配だ。「コロナ禍で、要介護状態になるリスクは確実に高まっている」と石本准教授は注意を促す。

 「ウィズコロナ」の時代を健康に過ごすためのポイントとして、石本准教授は軽運動の習慣化と、オンラインの上手な活用を挙げる。運動はスクワットや腹筋を、回数を決めて毎日こなすのが理想だが、きついようなら背伸びのようなストレッチ、首や腕を回したり、寝転んで足を上げたり下げたりするだけでも効果があるという。「体を動かそうという意識を持つことが大切。少しずつでも継続すると、筋力や体の機能の維持につながり、体調も気分も良くなる」。持病がある人は、万が一に感染した際の重症化を防ぐためにも、日々の体調管理と適切な治療が重要だ。

 暖かくなるこれからの季節は、無理のないペースで散歩を楽しむのもお薦め。低栄養を防ぐため、食事では、肉や魚、大豆製品など、筋肉のもととなるタンパク質を摂取するよう心掛けたい。

 「コロナ禍で対面の機会が減った一方で、オンラインの進歩は高齢者の可能性を広げたという一面もある」と石本准教授。高齢者の間でも、スマートフォンやタブレット端末の普及が進み、無料通信アプリ「LINE(ライン)」やビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使うと、遠方の家族や知人とも簡単に会話ができる。動画投稿サイト・ユーチューブでは、さまざまな趣味や運動などの動画が登録されている。「上手に使いこなせば人とのつながりが維持できるだけでなくより密になり、趣味や娯楽の幅も広がる」

 石本准教授は、「おうち時間」の過ごし方として、新しい趣味や少し手の込んだ料理への挑戦を提案する。「コロナ禍と上手に付き合うためには、自分の健康状態をきちんと把握し、心身ともに張りのある日々を送る必要がある。無理のない運動と人とのつながり、生活を楽しむ気持ちで過ごすことを心掛けて」と呼び掛ける。

(2022年03月22日 更新)

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