コロナ下の避難所 感染対策は 岡山市危機管理室に聞く

持病のある人が避難所生活する際の注意点などについて話す斎藤医師

 新型コロナウイルス禍が続く中、国の通知などに基づき各自治体は災害時の避難所の在り方を見直している。出水期を迎え、内容について気掛かりな人もいるだろう。感染防止に向けての取り組みや、避難者に求められる対応はどういったものがあるのか。岡山市危機管理室を訪ねてみた。

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 各避難所では消毒の徹底と、検温も到着時に実施する方針。マスク着用も呼び掛け、不足した場合には配布できるよう予備を用意している。運営側の職員もマスク、フェースガード、エプロンを着けて対応する。

 密となる状況を防ぐため、世帯ごとの間隔は1メートル以上空けるように運用を変更。期間が長引くようであれば、テント型のパーティションを配布する。体調不良者用の別室も設ける計画で、コロナ感染の可能性がある人の利用を見据えて一般のスペースとはしっかりと隔離する。

 こういった対策を講じるため、避難所の定員は以前に比べて抑える必要がある。現在は避難情報を発令した際、対象エリアの隣接地域の避難所も開設して使用。加えて、車中泊用の避難場所も設けることとし、安全に駐車できる場所であることなどを条件に岡山市内では小中学校のグラウンドをはじめ計43カ所を指定している。現在、指定避難所は175施設あり、各避難所の混雑具合をリアルタイムで紹介する専用サイトも準備している。

 避難者へのアドバイスとしては、どこに避難するにしても3日分の非常食、水、常備薬など必須ともいえる持ち出し品に加え、コロナ禍では数日分のマスク、消毒液、除菌シート、体温計も用意した方が良い。特に便利なのはポリ袋で、くるむことで食器を汚さずに何度も使えるようにしたり、段ボール箱にかぶせて水を運んだりできるほか、感染防止用の手袋代わりにもなる。感染対策グッズは自治体が準備しているが、数に限りがあるため、無理のない範囲で持参してほしい。

 自宅療養・待機をしているコロナの陽性者や濃厚接触者が避難する場合、必ず保健所の受診相談センターに連絡してほしい。住所を伝えてくれれば、専用の場所を知らせる。岡山市内では陽性者用3カ所、濃厚接触者用4カ所がある。場所は偏見などを防ぐため非公開としているので、安心して利用してもらえるはずだ。それ以外の人は発熱や咳(せき)の症状があっても、一般の避難所に向かってもらうことになる。到着後に速やかに職員に申し出てもらえれば。体調不良者用の別室を案内することになるだろう。

 このように各避難所では感染対策を講じており、コロナ陽性者らにも対応できるよう体制を整備している。コロナ禍で人が集まる場所に行くのが怖いと感じる人がいるかもしれないが、災害時に命を守るには安全確保が第一であり、ためらわずに避難してほしい。

■持病のある人 ワクチンを 岡山赤十字病院医療社会事業部長・斎藤博則医師

 災害時の避難所生活では、環境の変化やストレスなどで体調を崩すことが懸念される。新型コロナウイルスの脅威も加わり、持病のある人は特に注意が必要。統括DMAT(災害派遣医療チーム)として被災地で活動した経験を持つ岡山赤十字病院(岡山市)医療社会事業部長の斎藤博則医師(57)に、持病のある人の注意点などを聞いた。

 ―コロナ禍が続く中、持病のある人が避難所生活で気を付ける点は。

 糖尿病や高血圧などの持病がある場合、コロナ感染時の重症化リスクは高い。感染予防と免疫力を保つことに気を配ってほしい。免疫力維持には運動、睡眠、食事が大切。まず運動はお年寄りの足腰が弱るのを防ぎ、日中に行えば疲れて夜に眠りやすくなる好循環も生まれる。食事は保存食で栄養が偏ったり、同じメニューが続いて食欲が湧かなかったりすることも考えられるので、留意が必要だ。

 ―感染予防の対策は。

 ワクチンを打ってほしい。接種しておけば、感染しても重症化リスクを下げられる。基本ではあるが、マスクの着用、手指消毒の徹底が有効。また、コロナだけでなく、災害の避難時には他の良くない菌も舞っている可能性があるため、ゴーグル着用がお勧め。私は被災地に行くのを想定し、目薬も常備している。

 ―持病がある人への避難時のアドバイスは。

 「お薬手帳」は肌身離さず持ち運ぶべきだ。薬の名前まで覚えるのは難しく、高齢になれば種類も増える傾向にある。手帳があれば、医師が病状を判断しやすく、適切な対応にもつながる。実際にコロナ禍の2020年7月、熊本豪雨で被災地の熊本県人吉市に派遣された際、個人ごとに必要な薬が分かるリストが作られており、便利だった。理想を言えば、1週間分ほどの薬を非常持ち出し品に入れておいてほしい。

 ―不特定の多くの人が集まる避難所が怖いと思う人もいる。

 避難所に不安を感じるのであれば、親戚宅や車中泊も選択肢になる。必ずしも同居家族と一緒に行動する必要はなく、持病のある人だけ別の場所に逃げてもよい。家族を交えて事前に検討してみてはどうか。

(2022年06月23日 更新)

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