(7)心不全の地域医療連携 倉敷中央病院地域医療連携室 竹内雄介

竹内雄介氏

 心不全という疾患は、個々の医療機関で完結するのではなく、地域の医療機関が連携・協力し、治療を行っています。

 ■地域の医療機関が連携して患者さんの治療を行う

 倉敷中央病院では、年間900件ほどの心不全の入院患者さんの治療を行っており、日本全体の医療機関の中でも最大規模になっています。

 心不全の患者さんは年々急増しており、当院の治療のみで完結するのではなく、地域の医療機関が連携し、包括的に診療を行う体制を組むことで、医療資源を有効活用し、この多数の治療にあたることを実現しています。

 ■3人主治医体制の推進

 倉敷中央病院では、地域の医療機関と連携して「3人主治医体制」の推進を行っています。

 「3人主治医体制」とは、病状に合わせて「かかりつけ医」「循環器内科専門医がいる病院」「倉敷中央病院」の3人の主治医が包括的に患者さんの治療を行う体制を意味します。

 以前は「かかりつけ医」と「倉敷中央病院」の連携が主流となっておりましたが、「循環器内科専門医がいる病院」とも連携し、症状が安定している場合は「かかりつけ医」が治療を行い、もし症状が悪化した場合は「循環器内科専門医がいる病院」へ紹介する流れを作っています。(症状によっては「倉敷中央病院」への紹介となります)

 この体制を取ることで、病状が安定している場合は、自宅近くの医療機関を受診することができます。そのため、負荷になる物理的な遠方の移動を必要としないことと、日常診療も含めて患者さんを診ることができるので、患者さん・医療機関双方に取って有意義な形と言えるでしょう。

 ■心不全地域連携クリティカルパスの活用

 地域の医療機関と連携する上で、有効なツールとなっているのが「心不全地域連携クリティカルパス」(以下、心不全パス)です。

 倉敷中央病院に心不全で入院するとA3見開きで折りたたみ式の用紙が発行されます。これが心不全パスというツールになります。心不全パスは入院から退院、そして退院後までの流れが俯瞰(ふかん)的にまとめられたフローマップのようなもので、患者さん自身がどのような治療を受けるか、また、退院後はどの医療機関へ引き継がれるのか把握することができます。

 患者さん自身が治療に対して理解が深まると同時に、退院後持参していただく事で、引き継ぎ先の医療機関も今までの診療の流れが確認できるため、連携ツールとして役立っています。

 ■疾患の増加をどう受け止めていくか

 65歳以上の人口比率が28・7%(2020年度)である超高齢社会の日本は、高齢になるほど罹患(りかん)率が高まる心不全という疾患の特性から、パンデミック状況下であるといえます。30年には高齢化率は30%を超えると想定され、さらに患者数が急激に増えると懸念されています。

 一つの医療機関で治療できる医療資源には限度があります。

 地域全体で協力しながら治療に取り組むため、倉敷中央病院ではITを活用した患者情報の共有ツールの利用促進や、地域の医療従事者が集う疾患学習の会の定期的な開催なども行っております。心不全という疾患の展望も考慮した上で、今後も地域医療の連携を図っていきます。

     ◇

 倉敷中央病院(086―422―0210)。連載は今回で終わりです。

 たけうち・ゆうすけ 広告代理店の営業職、ITサービス関連企業の企画職を経て、2018年6月に倉敷中央病院地域医療連携室へ入職。

(2022年07月04日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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