(5)膵臓がんを克服する―その3「薬物療法と今後の展望」 岡山赤十字病院胆膵内科部長兼消化器内科副部長 原田亮

岡山赤十字病院で膵がん治療に取り組む多職種チーム

原田亮氏

 岡山赤十字病院の消化器内科(胆膵内科)・消化器外科(肝胆膵外科)の専門医が膵(すい)臓がんの克服へむけて診断から治療、当院における取り組みについて3回にわたり説明しております。最終回の今回は薬物療法、その他の検査や取り組みについて説明します。

 【薬物療法】

 前回説明したように、膵臓がんに対しては、切除可能・切除可能境界の膵臓がんでも手術前に抗がん剤治療を行います。それぞれのグループで使用する薬剤について説明します。

 切除可能膵がん 一般的にはゲムシタビン(点滴)、エスワン(飲み薬)という抗がん剤を合わせた治療が行われます。約2カ月間の治療後にCTで評価し手術を行います。

 切除可能境界・切除不能膵がん FOLFIRINOX療法(4剤併用)またはゲムシタビン・アブラキサン併用療法を中心に治療を行います。これらの治療で効果が得られることが多くはなってきておりますが、まだまだ今後も薬剤開発が必要な状況です。

 【遺伝子パネル検査】

 さまざまながんに関連した遺伝子変異の検査をすることで変異に合う治療薬を探すことができるという検査です。近年保険適用となったばかりで、まだ10%ほどしか実際の治療に結びついてはいませんが、現在それらの遺伝子変異に対応した治療薬が開発中です。

 検査は受けることができる基準がありますので、ご希望の方は主治医の先生に相談してみてください。

 【栄養療法・リハビリ指導】

 膵臓は消化酵素を分泌する臓器ですので、膵がんになると消化酵素が不足し栄養状態が悪化することがわかっています。当院ではこれらに対して以前より薬剤師と協力し栄養剤、膵消化酵素補充剤を使用することで栄養状態の改善を心掛けてきました。

 しかし近年、栄養状態だけでなく、それに伴う筋肉量低下が手術や抗がん剤の治療成績に影響を及ぼすことが明らかになり、当院では今までの薬剤師による栄養療法に加えて、栄養士からの栄養指導、理学療法士からのリハビリ指導を追加することにより栄養状態・筋力維持を目指しています。

 多職種でのチームを結成し内科医・外科医だけでなく他の職種とも連携して、それぞれの役割を果たすことにより手術成績、抗がん剤治療の成績のさらなる向上を目指します。

 【さいごに】

 胆のう、胆管、膵臓の領域はまだまだ発展途上の領域です。今まで5回シリーズで胆石から膵臓がんまで当院での取り組みも含めて述べましたが、今後も当院ではさらに良い検査、良い治療をチーム一丸で目指して頑張っていきます。何かお困りのことなどありましたら当院までお越しください。

     ◇

 岡山赤十字病院(086―222―8811)。連載は今回で終わりです。

 はらだ・りょう 岡山大学医学部、同大学大学院卒。広島市民病院、岡山済生会総合病院、手稲渓仁会病院(札幌)、岡山大学病院などを経て2014年より岡山赤十字病院勤務。日本内科学会総合内科専門医・認定医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本胆道学会指導医など。

(2022年07月04日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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