コロナ感染の透析患者 重症化不安 軽症は自宅療養、遠方通院負担に

しげい病院のコロナ専用室で透析を受ける患者=1日(同病院提供、画像の一部を加工しています)

 新型コロナウイルスの流行「第7波」の影響で、岡山県内では重症化リスクが高いとされる人工透析患者のコロナ感染が相次いでいる。県によると、7月中旬以降の感染者数は100人以上に上る。透析患者向けの専用病床は14床あるが、県は6月に原則入院としてきた基準を変更。無症状や軽症の人は自宅療養となっており、重症化への不安を抱えながら療養生活を送る。感染対策などの観点から、かかりつけの医療機関で透析治療が受けられなくなり、遠方への通院を余儀なくされるケースもある。

 「腎臓が悪いだけでなく、心臓にも疾患がある。『いつ重症化してしまうのだろうか』と心配で寝られなかった」

 5年ほど前から透析治療を受けている男性(72)=備前市=が振り返る。

 男性のコロナ感染が分かったのは8月上旬。発熱のみだったため、軽症と診断され、自宅療養になった。

 週に3回、透析に通っている同市内の病院からは「対応できない」と告げられた。県から紹介された透析の通院先は岡山市内の病院。自ら車のハンドルを握り、片道1時間の道のりを4日間通ったという。「倦怠(けんたい)感が強くなる透析直後の長距離運転は大きな負担。もう二度とこんな思いはしたくない」と男性は話した。

 県医師会によると、糖尿病などが原因で腎臓の機能が低下し、血液中の老廃物を人工的に取り除く人工透析を受ける県内の患者は約5600人。体力や免疫力が低下しており、コロナの重症化リスクが高い。

 透析患者がコロナに感染した場合、国は原則入院させるよう求めており、県も以前はこの基準に沿っていた。だが、今年に入り始まった流行「第6波」で感染者が急増。県内では1~3月、透析患者87人のコロナ感染が確認され、専用病床(当時13床)のほとんどが埋まる日もあった。

 マンパワーに院内感染予防、透析に関する設備…。「医療機関側の事情もあり、専用病床の増床はたやすくない」(県新型コロナウイルス感染症対策室)ことから、県はその入院基準を中等症、重症になった透析患者に限るよう変更した。

 そして襲来した今回の第7波。1日当たりの新規感染者数は、過去の波とは比べものにならないほど増加。透析患者の感染も相次ぎ、中等症以上の患者が入院する専用14床は8月上旬から満床が続く。

 軽症、無症状者は基準に沿って自宅療養に。かかりつけの医療機関で透析治療が続けられない場合、県が他の医療機関(約20施設)を紹介するが、備前市の男性のように自宅近くで受け入れてもらえないことも少なくない。

 県内で最大の専用病床6床があり、通院での透析も受け入れるしげい病院(倉敷市幸町)。入院用のベッドは退院するなどして空きが出ても、すぐに埋まる状況が続く。「設備や人繰りなどから現段階では入院、通院で受けられるのは10人までだが、できる限りのことはしたい」と有元克彦院長。次の波を見据え、入院病床の増床や設備改修などを行い、10人ほどの受け入れ拡大を目指すという。

 自宅療養する透析患者を見守る保健所も、1日に数回の電話連絡をして健康状態を直接聞き取り「重症化の兆候をできる限り早期に把握できるよう努めている」。県は今後、より多くの医療機関に通院透析に協力してもらえるよう働きかけていく方針だ。

(2022年09月03日 更新)

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