(3)大腸ポリープについて チクバ外科・胃腸科・肛門科病院診療部長 鈴木健夫

鈴木健夫氏

 大腸の粘膜の一部がイボ状に盛り上がったものをポリープと言います。大きさ、形もさまざまで、大きく腫瘍性のものと非腫瘍性のものに分けられます。特に腫瘍性ポリープは良性(腺腫)と悪性(がん)に分けられ、良性のポリープも悪性化することがあります。

 ■症状

 大腸ポリープは、基本的に症状はありません。そのため早期に病気を見つけるために大腸がん検診はとても重要です。

 ■診断

 内視鏡検査で確認し、ポリープに色素を散布したり、特殊な光を当てたり、細胞の検査によりだいたいの診断に至ります。そして切除適応を見極め、切除したポリープをさらに顕微鏡で確認(病理組織検査)し、最終診断となります。この結果により外科手術が必要になることもあります。

 ■治療

 大腸腺腫性ポリープの内視鏡での切除により、大腸がん罹患(りかん)率は76~90%、死亡率は53%抑制されるとの報告もあり、大腸ポリープに対する内視鏡治療は広く行われています。

 代表的な切除術に下記の3種類の方法があります。

 (1)ポリープ切除術(ポリペクトミー) ポリープの茎部(根元)にスネア(輪状の針金)をかけ、電流を流して切り取ります。最近は電流を流さず切り取る方法もあります。がん化の疑われない1センチ以下のポリープなどが適応。

 (2)粘膜切除術(EMR) ポリープのある粘膜の下に薬液を注入し、ポリープを浮かせ、そこにスネアをかけ切り取ります。がん化が疑われたり、1~2センチ大のポリープなどが適応。

 (3)粘膜下層剥離術(ESD) ポリープのある粘膜の下に薬液を注入し、専用の電気メスで少しずつ剥離し切除します。最大径が2センチ以上の早期がんなどが適応。

 ■治療の偶発症

 まれではありますが、切除した部位に穴が開いたり(穿孔(せんこう))、出血することがあります。多くは治療中に起こりますが、時間がたってから起こることもあります。

 ほとんどが内視鏡で治療できますが、手術が必要となることもあります。

 ■大腸がんの予防

 大腸がんの危険因子には(1)年齢(50歳以上)(2)大腸がんの家族歴(3)高カロリー摂取および肥満(赤身肉・加工肉の摂取)(4)過度のアルコール摂取(5)喫煙―などが挙げられ、抑制因子として(1)野菜、果物の食物繊維の摂取(2)適度な運動習慣―が挙げられます。

 以上を踏まえ、1次予防として生活習慣の改善、2次予防として早期発見、早期治療を目指し、積極的に大腸がん検診を、状況により内視鏡検査を受けることが重要です。そして前がん病変となる良性ポリープの治療も重要となります。

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 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院(086―485―1755)。連載は今回で終わりです。

 すずき・たけお 香川医科大学医学部卒業。香川医科大学附属病院、愛媛県立中央病院などを経て2006年よりチクバ外科・胃腸科・肛門科病院勤務。日本外科学会専門医、日本大腸肛門病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。

(2022年09月05日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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