泌尿器がん治療や緩和ケア追究 「松岡良明賞」津島氏に聞く

津島知靖氏

 がん撲滅に功績のあった個人・団体をたたえる山陽新聞社会事業団の第27回「松岡良明賞」を受賞した国立病院機構岡山医療センター(岡山市北区田益)元副院長の津島知靖氏。40年以上にわたり、腎がんの治療や研究のほか、がん患者の緩和医療の普及などに力を尽くしてきた。いま取り組んでいる活動などを聞いた。

 ―1990年代後半、県内ではいち早く腎がんの腎部分切除術を始めた。

 がん組織とその周辺のみを取り除き、正常な部分を温存する手術。血液をろ過して老廃物を取り除く腎臓の機能を保つことで、心臓や血管に関わる合併症のリスクを抑え、患者のQOL(生活の質)向上につながる。CTやエコーといった医療機器の進化で、がんが小さい初期のうちに発見できることが多くなって普及した。腎臓への血流を一時的に止めて腫瘍を切除し、止血する方法が一般的だ。血流の遮断時間が長くなれば、再出血や機能低下のリスクが高まるため、手早く確実な処置を心掛けてきた。これまでの症例数は約100例だ。

 ―日本緩和医療学会では、がん患者の苦痛を取り除く緩和ケアの手法を示すガイドライン作成を主導した。

 泌尿器科の専門医として、緩和ケアに長年携わった経験から任された。泌尿器以外のがん患者も血尿や頻尿、膀胱(ぼうこう)の痛みなどを訴えることがあるが、泌尿器科医がすぐに対応できないケースは少なくない。専門医ではない医師や看護師向けに、病気の進行や治療の過程によって生じる泌尿器の症状と処置法をまとめた。例えば血尿では手術、薬剤、放射線などによる治療法とそれぞれのリスクを掲載。尿路結石など専門医に相談が必要な症状も明記した。

 ―岡山医療センターでは2014年から5年間、副院長を務め、研修医の育成などに取り組んだ。

 国家試験に合格した医師は2年間、複数の診療科を巡って診断や処置法を習得するとともに、患者との接し方や医療人としての心構えを学ぶ初期研修を行う。岡山医療センターでは研修プログラムを管理する責任者として約70人の養成に関わった。患者が抱える不安を理解し、一人一人としっかり向き合う姿勢を伝えてきたつもりだ。

 ―定年退職後も岡山医療センターや玉野市民病院(玉野市)、吉永病院(備前市)などで診療を続けている。

 現在、県内にいる泌尿器科の専門医は岡山、倉敷、津山市などに集中しており、空白の地域も多い。一方で、食生活の欧米化や高齢化などの影響で、前立腺がん、膀胱、腎臓のがん患者は全国的に増えている。丁寧に説明し、患者やその家族とともに最善の治療法を考えていくという信念を貫き、体力が続く限り診療を続けていきたい。

 つしま・ともやす 1978年岡山大医学部卒。同大医学部付属病院(現岡山大病院)泌尿器科講師、同学部泌尿器科学助教授、国立病院機構岡山医療センター副院長などを歴任した。泌尿器科専門医・指導医。岡山市在住。68歳。

(2022年09月22日 更新)

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