全数把握簡略化 医療現場は負担減 岡山県内 軽症者に新たな相談窓口

岡山市の専用システムに患者情報を入力する平田院長=26日午後7時5分、岡山市南区築港新町

発生届の対象外となる感染者らの登録などを確認する岡山市保健所の職員ら=26日午後2時13分、岡山市北区鹿田町

 新型コロナウイルス感染の発生届を高齢者らリスクの高い人に限定する全数把握の簡略化が26日、全国一律で始まった。岡山県内の医療機関は事務負担が軽減されたとしておおむね歓迎する一方、発生届の対象から外れる感染者が自宅で重症化する恐れを懸念する声も。岡山、倉敷市の両保健所と県では軽症者向けの相談窓口の新たな運用を始めた。

 あけぼのクリニック(岡山市南区築港新町)ではこの日、10代と50代の計2人の感染を確認。基礎疾患がなく、届け出対象ではないため、平田洋院長は岡山市保健所への報告システムに2人の年代だけ登録した。

 「格段に省力化できた」と平田院長。流行「第7波」では多い時で1日当たり15人前後から名前や住所、基礎疾患の有無を聞き取り、システムに入力していた。毎日、診療時間外の夜や朝に2時間とられていたといい「感染者が今後再拡大しても対応できそう」と話す。

 第7波のピーク時も1日50人以上の感染者を診断していた岡山赤十字病院(同市北区青江)の辻尚志院長も「担当看護師の負担が重かった。重症者らのケアに、より集中できるようになる」と期待する。

 「感染拡大を防ぐ有効な対策を打つことが難しくなるのでは」と指摘するのは青木内科小児科医院(同市南区大福)の青木佳之院長。「感染症対策の本来の在り方からすればデメリットの方が大きい」と懸念する。

 簡略化初日に合わせ、岡山市内で会見した県医師会の松山正春会長は「医療現場の負担軽減になる」としつつも、発生届対象外の患者が自宅で重症化するリスクは拭い切れないと指摘。自治体の専用窓口に感染者が自ら相談・登録するため「不慣れな県民もおり、混乱を生じさせる可能性がある」とし「異変を感じたら早めにかかりつけ医などへ相談して」と呼び掛けた。

 重症化リスクが高い感染者を確認する保健所の業務も減少。津山市や鏡野、久米南、美咲町を管轄する県美作保健所(同市)は最近は1日50人ほどだった感染者の確認が26日は届け出の減少に伴い9人にとどまった。「確認が必要な感染者が従来の2割まで減ると見込んでいる」(同保健所)という。

 県と倉敷、岡山市は26日、発生届の対象外となる感染者が自ら連絡し、登録する窓口の運用を開始。岡山市では対象外の感染者の相談をきめ細かく受けるために受診相談センターのスタッフを従来の1・5倍の25人に増やした。

(2022年09月26日 更新)

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