電気で舌刺激 睡眠時の気道確保 川崎医大病院、中四国で初導入

鎖骨付近に埋め込む装置(左)。右はリモコン(川崎医科大付属病院提供)

 川崎医科大付属病院(倉敷市松島)は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のうち、舌が喉をふさいでしまう閉塞(へいそく)型(OSA)の治療法「舌下神経電気刺激療法」を導入した。鎖骨付近に手術で埋め込んだ小型の装置から電気による刺激を送り、舌を動かす仕組み。同病院によると、中四国地方での導入は初めて。

 あおむけで寝た際、舌の付け根が喉の奥側に落ち込んで気道がふさがり、無呼吸(10秒以上の呼吸停止)や浅い呼吸が1時間に5回以上発生した場合に診断される。肥満、鼻炎などが原因で、国内でのOSAの推計患者数は約200万人。睡眠の質が下がることで、日中に強い眠気に襲われ、集中力も低下。放置すると、脳卒中など別の疾患につながる可能性もある。

 代表的な治療法は、鼻に着けたマスクから空気を送るCPAP療法だが、不快感で無意識にマスクを外したり、鼻が詰まって効果が下がったりする場合がある。今回の治療は手術が伴うため、CPAPが適さない患者が対象となる。

 米国製の装置は縦4・6センチ、横5・1センチ、厚さ8・4ミリ。右側の鎖骨下に埋め込み、細い電線を顎まで通して神経に軽い刺激を伝える。就寝前にスイッチを入れると、睡眠中の呼吸に合わせて1分間に12~15回作動する。

 担当は耳鼻咽喉・頭頸部(けいぶ)外科。手術時間は2時間半~4時間で、術後4日間の入院が必要になる。経過観察し、1カ月後から治療を始める。費用は約300万円だが、保険が適用される。3割負担だと90万円を病院の窓口で払うことになるが、医療費が一定額を超えた場合に払い戻す高額療養費制度が利用できる。

 耳鼻咽喉・頭頸部外科の原浩貴部長は「脳や心臓に大きな負担をかけてしまう重大な疾患。患者の眠りの質を高め、将来のリスク回避につなげたい」と話している。

 舌下神経電気刺激療法は2014年、米国の病院で始まり、国内では昨年6月に保険適用に。川崎医科大付属病院は今年8月に導入し、これまでに治療を受けた患者はいない。

(2022年10月03日 更新)

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