(2)副作用 過度に恐れず理解を 真鍋洋平

真鍋洋平氏

 生涯で一度も薬を使ったことがない、という方は少ないのではないでしょうか。私たちの周りには多種多様な薬があり、さまざまな病気や症状の改善に役立っています。その一方でどんな薬にも大なり小なり副作用の可能性が存在します。

 ■副作用とは

 副作用の定義は「医薬品の使用によって生じた因果関係の否定できない有害な反応」として表現されます。平たく言えば「薬本来の目的・効果以外の望ましくない作用」です。目的とする薬の効果は一つしかなくても、副作用の種類は非常にたくさんあります。起きる頻度の多いもの少ないもの、症状の重いもの軽いもの、可能性のあることを全てひっくるめると、薬は一つでも副作用は数十種類にのぼることもあり、枚挙にいとまがありません。複数の薬を服用している方ならなおさらです。

 ■理解しておきたい副作用

 副作用全てを覚えることは現実的ではありません。そのような中でも、できれば理解しておきたい代表的な副作用が2パターンあります。

 (1)「比較的よく起きる副作用」と、(2)「まれにしか起きないけど起きたときには重篤な副作用」です。

 具体例を一つ挙げます。高血圧の薬にアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)という種類の薬があります。成分名が「〇〇プリル」という名前の一群の薬です。体内で血圧を上げる物質の生成を妨げ、血圧を下げます。

 代表的な副作用に(1)の例として「空咳(からせき)」、(2)の例として「血管性浮腫」というものがあります。

 (1)の空咳とは痰(たん)の出ない乾いた咳が出る副作用で比較的よくみられます。症状がつらい場合はすぐに薬の変更も考慮されますが、軽い症状であれば様子を見て次の受診時に伝える、という方針もとれます。

 (2)の血管性浮腫は極めてまれな副作用ですが、症状があった場合ただちに薬の服用を中止し、受診が勧奨されます。

 血管性浮腫とは、皮膚や粘膜下の血管で水分が血管外にしみ出しやすくなり、皮膚や粘膜で急に浮腫(むくみ)が出る副作用です。自覚症状としてまぶたや唇、舌など顔面の腫れがあります。腸の粘膜が腫れると腹痛や吐き気を伴ったり、のどの粘膜が腫れると呼吸困難に陥ることもあり、即時に原因薬中止の対応が必要です。

 空咳、血管性浮腫いずれの副作用も、ACE阻害薬によって体内で咳や浮腫の原因となるブラジキニンという物質が増えてしまうためです。本来の降圧目的とは外れた作用で起こるものです。

 ■薬剤師に聞こう

 副作用のリスクを過度に恐れて必要な薬を自己判断で中止してはいけませんが、どのような副作用があるのか正しく理解しておくことはとても大切です。

 ただ、患者さん独りで注意すべき副作用を理解することは容易ではありません。これを分かりやすく説明するために薬剤師がいます。長く使っている薬でも、いま一度薬剤師に「この薬の気を付けないといけない副作用ってなんでしょうか」と問いかけてみてはいかがでしょうか。副作用の症状で気になることがあれば気軽に相談してください。

 まなべ・ようへい 岡山大学薬学部卒。製薬企業でワクチン製造・研究開発を経て2015年に同大学病院薬剤部に入職。主に入院病棟での薬剤管理指導業務に従事。日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師。

(2022年10月04日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

関連病院

PAGE TOP