間質細胞が免疫抑制細胞呼び寄せ 口腔がん、岡山大河合助教ら確認

河合穂高助教

 岡山大の河合穂高助教(口腔(こうくう)病理学)らは、口腔がん細胞の周辺にある間質細胞が、がんの影響を受けて変質し、骨髄で作られる免疫を抑制する細胞を呼び寄せていることを確認した。この細胞はがんを攻撃するキラーT細胞の働きを弱めるため、グループは今回の生体反応が、がん増殖を手助けしていると推測している。

 間質細胞はさまざまな細胞の周辺にあり、それを支えている。口腔がん細胞周辺の組織を分析したところ、間質細胞が炎症を引き起こすタンパク質(サイトカイン)を多く分泌していたため、がんとの関連を調べた。

 実験は、ミャンマーから来日し同大大学院博士課程を9月に修了、引き続き同大で研究に当たるメイ・ワト・ウさん(29)らがマウスを使って実施。ヒト由来の口腔がん細胞株と実際の口腔がん患者から採取した間質細胞を混ぜた液体を額に注射した12匹と、同株と健康な人の間質細胞を混ぜて打った6匹を分析した。

 マウスの額のサイトカインを分泌する細胞数を比べたところ、12匹の平均は数十個で、6匹の約2・5倍だった。骨髄由来の免疫を抑制する細胞も約3倍多かった。

 免疫を抑制する細胞には、サイトカインとの結合に適した受容体があることも確認。グループは、間質細胞ががんの影響を受けて性質が変わってサイトカインを分泌し、骨髄から免疫を抑制する細胞を呼び寄せていると結論付けた。

 グループはサイトカインの分泌を抑えるが、安全性が確認されていない薬剤に着目。「臨床応用されれば、従来の免疫療法の効き目を向上させられる可能性が高い」と河合助教。かみたばこ文化を背景に口腔がん患者が多いとされるミャンマーでの治療を目指すメイさんは「今回の成果を未来への一歩にしたい」と話している。

 研究成果は米医学誌に掲載された。

(2022年10月15日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

カテゴリー

関連病院

PAGE TOP