(7)新時代の医療をつなぐ~入退院管理支援(PFM)センター~ 岡山市立市民病院入退院管理支援センター長・副院長 臼井正明

臼井正明氏

 岡山市立市民病院は、救急医療、災害対策、医療教育を三つの柱として市民の皆さんに必要な医療を提供しています。

 2年以上におよぶ新型コロナウイルス感染症の拡大はいわばウイルスによる災害であり、当院は、重点医療機関として感染病棟の改築やウイルスの検査機器を整備して感染対策を強化してきました。同時に、患者さんに最新の医療を提供するために、高度専門技術の導入も積極的に行い医療水準の向上に努めています。

 当院の高度専門医療には、カテーテル・顕微鏡を用いた脳卒中治療、患者さんに負担の少ない低侵襲がん治療、スタッフと設備(無菌室)の充実した血液・腫瘍治療、整形外科ロボット人工関節手術などがあげられます。

 ■市民と医療をつなぐPFMセンター

 入退院管理支援センター(PFMセンター)は、P<Patient>が患者さん、F<Flow>は流れ、M<Management>は管理を示していて、患者さんと高度専門医療をつなぐ役割を担っています。PFMセンターは、病気やけがによって病院での治療が必要となった場合に、治療から退院後の療養までを切れ目なく支援します。

 高度専門医療を速やかに提供できるよう、PFMセンターには医師、看護師だけでなく薬剤師、医療ソーシャルワーカー、事務員など多くのスタッフが関わっています。例えば、手術や化学療法の予定がある患者さんには、治療の前に歯科でお口の健康状態のチェックを受けていただきます。歯科医院からの情報を入院中の口腔(こうくう)衛生指導に役立てることで、感染症防止に大きな成果が得られています。また、薬剤師による内服薬の確認により、入院中の薬剤管理がより確実になっています。さらに、療養支援看護師は患者さんの生活環境や介護の状況、入院や今後の治療に関する心配ごと、他院受診状況などの把握を行っています。

 患者さんにとっては、救急入院だけでなく、予定の入院でも治療期間や退院後の生活、仕事復帰など、頭をよぎる問題や不安は多方面に及びます。患者さんからお伺いした情報を、担当医師や病棟看護師と共有することで、適切な治療の提供につながっています。

 ■市民と地域をつなぐPFMセンター

 市民の皆さんを支える医療の提供には、多くの医療機関、施設が関わっています。当院のPFMセンターは、地域の診療所・病院や介護施設と連携するための病院の窓口です。自宅退院される患者さんには、安心して生活できるように、かかりつけ医やケアマネジャーと相談し、訪問診療、訪問看護やデイサービスなどの準備をします。

 また、病状や体力低下で自宅生活が困難な場合は、必要な医療・サービスが提供できる病院への転院や施設利用を手配します。入院前から退院後を見据えて、地域の医療機関・介護施設とともに切れ目のない診療体制を整えています。

 PFMセンターは、市民と病院をつなぎ、さらに市民と地域医療をつなぐ役割を果たすために日々活動しています。

     ◇

 岡山市立市民病院(086―737―3000)。連載は今回で終わりです。

 うすい・まさあき 朝日高校、岡山大学卒業。岡山大学病院を経て、1997年に岡山市立市民病院入職。2011年より現職。医学博士。日本人工関節学会評議員、日本リウマチ学会評議員・専門医・指導医、日本リウマチ友の会理事。

(2022年10月17日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

関連病院

PAGE TOP