(1)脳卒中の診断と治療~脳卒中は時間との闘い 岡山旭東病院脳卒中センター長脳神経外科主任医長 半田明

半田明氏

 脳卒中は、発症に大きく関わる危険因子として圧倒的に多い高血圧の他に、脂質代謝異常、糖尿病などの生活習慣病との因果関係も深い脳血管障害です。

 脳卒中は、脳へ血液を送る血管が詰まる脳梗塞と、脳の中で血管が破れる脳出血に大別されます。脳出血には、細い血管が破れる脳内出血と、脳の太い血管の一部が膨らんでできたコブ(脳動脈瘤(りゅう))が破裂することが主な原因となって、脳の表面を覆っているクモ膜下腔(まくかくう)に出血が広がるクモ膜下出血などがあります。

 ■症状

 脳卒中の症状はさまざまですが=図1、脳梗塞と脳内出血は、脳の一部の働きを突然失うため、症状がほぼ共通しており、クモ膜下出血の症状とは異なります。

 ただ、共通している特徴は、突然生じることです。就寝時には症状がなく、起床時に症状がある場合を除き、大部分が症状の始まりを、「何時何分から」というように特定できます。

 また、症状として、最も多いのは片まひで、次に多いのは言語障害、他に視力・視野障害(二重に見える、視野が狭い)、失調(体のバランスが取りにくい)などがあります。これらの症状に加え、意識状態(反応)が悪くなることもあります。

 クモ膜下出血の症状は、今までに経験したことのない激しい頭痛が特徴的で、同時に、嘔吐(おうと)することもしばしばで、重症の場合は意識障害を生じます。

 ■治療

 脳卒中は「時間との闘い(素早い対応)」と「専門性(正確な診断・治療)」の二つの面を両立させる形で対応しなければならない疾患です。

 脳の障害は、脳卒中の発症後、時間がたつほど大きくなります。障害が大きくなると、後遺症も重度となり、命の危険も高まります。ただ、治療=図2=は、脳梗塞、脳出血およびクモ膜下出血で、使用する治療薬も外科的手術を含む治療方法も異なります。

 そのため、できるだけ早く脳卒中の診断を行って適切に治療することが、転帰(回復の度合い)改善の鍵となり、大切になります。

 当院は中規模専門病院の特徴を生かし、脳神経内科・脳神経外科が中心となり、多職種との連携を密にしたチーム医療により、脳卒中のみならず、脳の急性期疾患の受け入れ、迅速な診断・治療およびその後のリハビリテーションまでを一貫して行っています。

 脳卒中を疑わせる症状を認めれば、たとえ数分程度で症状がなくなったとしても、できるだけ早く、お近くの脳卒中の治療ができる専門病院を受診することを強くお勧めします。

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 岡山旭東病院(086―276―3231)

 はんだ・あきら 川崎医科大学卒。岡山大学脳神経外科、大学関連病院、ジュネーブ大学神経放射線科、倉敷中央病院を経て2022年1月より現職。脳神経外科学会、脳卒中学会、脳神経血管内治療学会、頭痛学会、リハビリテーション学会の各専門医。スポーツ協会公認スポーツドクター。

(2022年11月07日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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