(1)総合周産期母子センターにおける小児外科―赤ちゃんの手術― 国立病院機構岡山医療センター小児外科医長 中原康雄

乳幼児でも高精細の顕微鏡や内視鏡などが有用な場合もあります

中原康雄氏

 ■小児外科の紹介

 岡山医療センター小児外科では、中学生までの小児に外科的治療を行っています。病気が発症して治療が必要となる時期はさまざまですが、その多くは生まれつきの病気です。生まれてすぐ、新生児期に、手術を行う場合もあります。そういった赤ちゃんは、新生児集中治療室で管理を行い、複数科で協力して治療します。

 前身の国立岡山病院から引き継がれる岡山医療センターの小児医療は、新生児医療から始まったと言っても過言ではなく、先達の先生方は、素晴らしい功績を残されてきました。数多くの新生児を治療していく中で、外科的な治療も必要となり、小児外科チームができて、現在にいたります。

 ■新生児の外科疾患

 新生児外科疾患は多岐にわたりますが、一つ一つの発生頻度は数千出生に1人とまれですので、一般の人は耳にしたこともないと思います。

 主な病気としては、食道閉鎖症、腸閉鎖症、直腸肛門奇形、腸回転異常症、横隔膜ヘルニア、腹壁形成異常(臍帯=さいたい=ヘルニア、腹壁破裂)、ヒルシュスプルング病などがあります。発生の段階で異常を生じ、消化管が詰まっていたり、腸の構造に問題があったり、本来ない穴が開いていたりします。

 病名だけ聞くと、非常に治療が難しい病気のように感じられるかもしれません。ただ実際には、適切に管理し、きちんと外科的に再建することで、特別に重症であったり、複数の病気を合併していたりしなければ、多くは完治に近い状態まで治療することができます。

 実際、食道閉鎖症や腸閉鎖症などの手術は、腋窩(えきか)のしわや臍輪(さいりん)を切開して治療することもできるため、傷もきれいになります。本邦の疾患別死亡率を示しますが、時代とともに改善されているのが分かります=グラフ

 ■胎児診断から治療まで

 近年では検査機器、技術の進歩で胎児期に異常が発見される場合も増えてきています。出生前に赤ちゃんに病気があると診断された場合は、ご家族は悲しみ、そして不安や心配などの感情を抱かれると思います。ご家族には病気と治療、そして予想される経過について正確な情報を知っていただき、少しでも不安を和らげることができるように医師、看護師、臨床心理士など多職種が関わりサポートをしています。

 分娩(ぶんべん)方法や時期を計画し、出生後の検査で病気の診断が確定すれば、手術等必要な治療を行います。われわれは、できるだけ赤ちゃんの体に負担が少なく、合併症のない、そして長期的にも臓器の働きが良好な手術術式が最良と考えて、治療を行っています。

 無事に治療を終えて退院した後も、子供たちが成長して大人になるまで支えることも小児外科医の役割の一つです。

 今回はあまり知られていない、赤ちゃんの手術について紹介させていただきました。

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 国立病院機構岡山医療センター(086―294―9911)

 なかはら・やすお 岡山大学医学部卒業、同大大学院医歯薬学総合研究科博士課程修了。国内外の大学病院、小児病院で研修、勤務。2013年から現職。日本小児外科学会指導医・専門医、日本外科学会専門医、小児泌尿器科学会認定医、小児がん認定外科医。

(2022年11月21日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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