(2)頸椎の病気 岡山旭東病院脊椎外科リハビリテーション科部長 時岡孝光

時岡孝光氏

 首には頸椎(けいつい)の骨が7個あります。その中を脳から連続した脊髄(せきずい)が通り、途中で腕、手指に行く神経根(しんけいこん)が枝分かれしています。

 骨のつなぎ目にはクッションの役目をする椎間板(ついかんばん)という組織があります。中高年になると椎間板がたるんで膨らみ、首の骨がこすれてトゲができます。

 首の病気は、椎間板が後ろに出たものが椎間板ヘルニア、首の骨にトゲができたものを頸椎症といいます。

 日本人には後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこつかしょう)といって首の骨の中に硬い骨のかたまりができる病気が多いです。症状は首の痛み、肩こりから始まり、脊髄が圧迫されると手足がしびれて動かしにくくなり、脊髄症と呼ばれます。神経痕が圧迫されると腕の激痛が出現し、神経根症と呼ばれます。

 診断は、医師による神経所見の診察と、レントゲン、MRI、CTによって行われます。手指を握ったり開いたりする動作が10秒間に20回未満であると脊髄症が始まっている可能性があります。

 治療は、神経根症の軽症では痛み止めの内服とリハビリで治ります。重症では神経根の圧迫をとる手術が必要です。椎間板ヘルニア、頸椎症性神経根症では、前方除圧固定術が一般的です。

 脊髄症ではまひの進行スピードが重要です。進行がゆっくりであれば定期診察だけで十分です。MRIで脊髄圧迫が強く、急に悪化している人は手術をお勧めします。目安としては、お箸が使いにくい、階段の上り下りが難しい場合は受診してください。

 脊髄を圧迫する場所が1カ所であれば前方除圧固定、複数の圧迫があれば椎弓(ついきゅう)形成術を行います。

 前方固定術は首の前方の皮膚を横に約3センチ切開して、椎間板ヘルニアを摘出して箱形の人工骨を挿入します。手術後早期にリハビリが始まり、入院は1、2週間です。

 椎弓形成術は首の後ろを縦に5~8センチ切開し、椎弓という骨を切り開いて脊髄の通り道を広くする方法です。狭い場所の数によっては最大で5椎弓を開きます。開いた骨を人工骨に固定したり、金属で固定することがあります。脊髄の圧迫をとり除く手術ですから、回復にかかる日数は体力と重症度により異なります。

 全ての病気に共通しますが、重症になってから手術した場合は回復に限界があります。ころんだだけで寝たきりになる高齢者が増加しています。その前に専門医にご相談ください。

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 岡山旭東病院(086―276―3231)

 ときおか・たかみつ 西大寺高校、高知医大卒業。高知医療センター整形外科部長を経て2021年より岡山旭東病院勤務。日本整形外科学会専門医、脊椎外科指導医、日本リハ学会専門医、指導医。

(2022年11月21日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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