(3)弁膜症のカテーテル治療 心臓病センター榊原病院循環器内科部長 吉田俊伸

吉田俊伸氏

 心臓=図1=は中央の壁で左右に仕切られていて、左右の部分はさらに上側の心房と下側の心室に分かれています。その分けられた四つの部屋である右心房、右心室、左心房、左心室の出口にあるのが弁で、血液が逆流しないように働いています。

 その弁がうまく働かなくなるのが弁膜症です。弁が閉じなくなり血液が逆流する閉鎖不全と、弁が硬くなって開きにくくなる狭窄(きょうさく)とがあります。手術が必要となることが多いのは左心室の出口にある大動脈弁と左心房と左心室の間にある僧帽弁です。

 弁膜症の自覚症状ですが、軽症では症状はなく、進行するにつれて胸の痛み、息切れ、動悸(どうき)、呼吸困難、浮腫といった症状が出てくるようになります。

 重症の弁膜症で、開胸による外科手術が難しい、リスクが高い方に対しては、カテーテルで治療をしています。当院で主に行っている弁膜症に対するカテーテル治療は、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI(タビ))と僧帽弁閉鎖不全症に対するマイトラクリップ(MitraClip=経皮的僧帽弁接合不全修復術)です。

 ■TAVI=図2

 動脈硬化で硬くなり狭窄した大動脈弁(大動脈弁狭窄症)に対する治療(TAVI)は、当院では2013年に開始しました。カテーテルを用いて人工弁=図3=を大動脈弁の位置に留置する治療で、多くの方は足の付け根から行っており術後問題なければ翌日から歩行、リハビリを行っています。

 ■MitraClip==図4

 僧帽弁閉鎖不全症に対しては、まず薬物治療を行いますが、十分な薬物治療をしていても息切れなどの心不全症状がある高度僧帽弁閉鎖不全症の方には、外科手術あるいはカテーテルでの治療を検討します。

 僧帽弁は前尖(ぜんせん)、後尖(こうせん)が接合することにより血液が逆流しない形になっています。うまく接合していない(逆流を生じている)部位をクリップでつなぎ合わせれば、血液の逆流を減らせます。マイトラクリップにより僧帽弁逆流を減少させることで、心不全症状の改善が期待できます。

     ◇

 心臓病センター榊原病院(086―225―7111)。

 よしだ・としのぶ 徳島大学医学部卒業。高知市立市民病院、高知医療センター、徳島県立三好病院、榊原記念病院を経て2012年より心臓病センター榊原病院勤務。総合内科専門医、循環器専門医、心血管カテーテル治療専門医、心臓リハビリテーション指導士、TAVI指導医。

(2022年11月21日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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